(掲載日2010.05.31)
経済学部廣江ゼミでは学生自身で課題を発見し、企画や政策提案をし、それを市民・企業・行政とともに実行しています。これまでにも歌舞伎町でオープンカフェを企画したり、立教をイメージしたシフォンケーキの製作・販売などさまざまな取り組みを行ってきました。今回は、大学生に身近なノートを利用して、オリジナルの環境マップを作成した様子をご紹介します。「同じ大学生に環境問題を考えてもらいたい!」、そんな思いから始まった環境マップ『ATLASTAR』。担当した学生に、制作の中で感じたことなどお伺いしました。
環境マップ『ATLASTAR』の表紙
「池袋周辺の環境MAP制作」は経済学部廣江ゼミナールの2年次生の課題として出されたものでした。10人の2年次が5人ずつ2班に分かれ、それぞれ指標を決めて、環境マップをつくりました。私たち5人のチーム名は「CHECKERS」。“人々の思いを、チェック模様のように交差させたい”との願いからつけました。
そして3年次になってからも引き続き5人で活動をしています。企画を始めてから、かたちにするまでに、1年近くかかりました。
池袋西口のMAP
一言で言うと、人々の環境意識を変えるためのマップ作りです。まず、都市問題の1つである“光害”に注目しました。“光害”とは、過剰な光が及ぼす害のこと。光は人間にとって大切なものですが、多すぎてもいけません。その両者のバランスが難しく、なかなか解決されない問題なのです。
課題となっている池袋周辺は、店舗などのネオンが夜遅くまで点灯されています。そんな明るい池袋でも、星が全く見えないわけではありません。この“光害”と“星”に焦点を当て、2つの指標をマップに落としこむことによって、“池袋なりの星の楽しみ方”を提供しようと考えたのです。
企画の対象は、池袋の“大学生”に絞りました。地元の大学生の活動は、住民の環境活動参加の促進になると考えたからです。また、「星」はロマンチックでオシャレなので、大学生が「光害」という環境問題を知る入口としてはうってつけだと思いました。
さらにこの環境マップを、利便性・価格・使用率の3点から考えて、大学生が手に取りやすいB6サイズの大学ノートに掲載しました。ノート名は、ATLAS(地図)とSTAR(星)をくっつけて“ATLASTAR”。星に関係するお店も二次元バーコードで地図に掲載し、「オシャレ」なノートができあがりました。
大学売店のセントポールプラザ(池袋店)や立教生がよく通うカフェ「セントポールの隣」のほか、池袋のジュンク堂や東急ハンズ、ヴィレッジヴァンガードにて190円で販売予定です。ぜひ手に取ってみてください。
制作打ち合わせの様子
まず苦労したのは、最初に思い描いた地図がなかなか形にならなかった点です。
最初は光害と星の関係を表した地図(池袋の明るい所では星は見えない、暗い所では星は見える)を作る予定でした。
そこで星の撮影をしようとしたのですが、天気が悪くて星が写らなかったり、星が目では見えているのに写真ではただの点になってしまったりなど、思っていたより星が見える時と見えない時の差が出ませんでした。
星の写真は諦め、主旨を「街が明るいせいで星が見えない」から、「街で星が見えることの素晴らしさ」に重点を移し、マップの構成を変えました。
制作費についても問題がありました。いざマップを印刷しようにも、私たちにはお金がありません。最初に交渉した印刷会社では、私たちの企画に大変興味を持ってくださり、長い期間交渉を続けましたが、結局かたちにすることはできませんでした。
しかしそんな時、企画を取材してくださったフリーマガジン「Seel」のご担当の方から株式会社報知新聞社を紹介していただくことができました。さらに、理学部物理学科の矢治健太郎特任准教授に紹介していただいた株式会社ホットスターから、なんと協賛金をいただくこともできました。私たちはこの企画を通して、人とのつながりの大切さも学ぶことができたのです。
ほかにも失敗作のノートが1000部近くできてしまうなど、さまざまな苦労がありましたが、一つ一つ、ゆっくりとですが解決策を見出してノートを完成させました。
このノートを見て池袋という街で星が生きていることを少しでも感じていただきたいです。ぜひ、みなさんもATLASTARを持って、池袋のちょっと贅沢な夜を歩いてみてください。
地図中の星の色で照度を表しています。
まず、夜の“池袋の明るさ”を調べるため、照度計を片手に一つ一つの道を歩き、照度を測定しました。これは非常に根気がいる作業で、メンバーで分担しながら、池袋の東口と西口を歩きつくしました。
測定結果の照度は5段階に色分けし、マップに落とし込みました。これで、「池袋の暗い所=星を眺めることができる場所」が一目でわかります。自分たちにしか作れないマップを制作しようと、マップのデザインは“手書き”にこだわりました。最初はメンバーがそれぞれ書いてきたものを持ち寄り、その中でも皆が気に入った1つをベースに決めました。地図としての機能は持たせたままで、オシャレでシンプルなデザインにしたい。何度も何度も作りなおし、皆で納得するマップをつくりました。
そのほか交渉、HP作成、マップのデザインなど、それぞれが自分の得意分野を活かし、積極的に取り組みました。あえて分担はせずにその分野で得意な人がリーダシップを発揮して主体的に動くことで、ほかの授業やサークル、アルバイトなどと両立させながら、効率よく進められたと思います。
制作過程で多くの人と関わりました。その中で、大きく2つのことを学びとることができました。
第1に、「環境問題」解決の難しさです。
「害とは、誰から見た害なのか。そして害は本当にあってはいけないのか。」
サンシャインシティ(池袋)のコニカミノルタプラネタリウム支配人の方へのヒアリングで、こんなお言葉を頂きました。経済活動と環境問題が複雑に絡み合い、害と聞いた途端にアレルギー反応を示す現代の日本社会を目の当たりにし、「害をなくす」ことによらない解決方法を模索する必要性を実感しました。
第2に、「学生」という立場を再認識したことです。これまで、「学生」として学ぶということは大学内で勉強し、知識見聞を広めるのが大部分だと思っていました。しかし、「学生」が社会に出て、社会が私達の考えに共感し、協同してくださるよう働きかけていく中で、「学生」という立場のもう一つの側面を見出しました。
それは、社会の縛りのない発想に基づき世論喚起ができるのは「学生」という立場なのだからこそということです。「学生」だからこそ思いつくアイデア、「学生」だからこその時間と足を使えるフットワーク。すべてのプロセスにおいて、それを実感しました。
CHECKERSの企画は、約1年の月日を経てようやくかたちになりました。しかし、社会に訴えかけるのは、ここからがスタートです。少しでも多くの人に私たちのノートを手にとってもらい、1人でも多くの人にふと池袋の夜空を見上げて「星」のことを考えてもらいたい。工夫と仕掛けをもって私たちのノートを送り出していきたいと思います。