レナタ・ルーチチさんの作品「魚字(ぎょじ)」が、昨年度「留学生文学賞」優秀賞を受賞されました。また、「週間読書人」にも3回にわたってエッセーを連載しました。
レナタさんの大学生活、日本への想いについて、お話をうかがいました。
現在は多和田葉子さんの作品をテーマにした修士論文を作成しています。多和田さんはドイツ在住で、(ドイツ国内でも)とても有名な方です。ドイツ語での執筆はもちろん、朗読会を行ったりもしています。
いつだったのかはよく覚えていません。でも「東京に行きたい」という憧れが小さいころからありました。おそらく何か印象的なものに出会っていたのかもしれないですね。本なのか、映画なのか…。不思議なことに「日本」ではなくて「東京」。おそらく自分がおもしろいと思ったことが何かあったのでしょう。
フンボルト大学入学後に日本語の勉強を始めました。それまでは「こんにちは」さえも知らなかったんです。ドイツ文学と日本文学と言語学を勉強していましたが、そのうち日本語が「おもしろい」と感じるようになりました。大学ではドイツ文学が主専攻で、最初ロシア文学と哲学を第二主専攻にしていたんですけど、1学期終了後、日本文学に変更しました。
一般的な答えをするのが難しいのですが、日本語の響きも好きだし、 ひとつの漢字がいろんな部首や漢字が組み合わさってできあがっていることにも興味があります。
好きな言葉は「たんぽぽ」です。響きが好き。映画のタイトルにもありましたよね。「たんぽぽ」という言葉はひらがなをイメージするのですが、、まあるい感じがしますよね。「ほ」についてる「゜」も、ローマ字にはない独特のものですし、形が丸い。漢字では「極」、この字が好きです。他の字にない組み合わせですね。 「へん」はよくありますけど、右側の「つくり」は少ないですよね。全体的にきれい。それと「霊」の字も好きです。顔みたいなつくりですよね。自分の名前を漢字にする時この「霊」を使ってみんなには変だと言われますが(笑)。 「霊」の意味も知っていますけど、私にはあまり悪い印象はないですね。
レナタさんの撮影した写真-1
日本に来た時は看板の写真ばかりをとっていました。それもさびれたものとかを中心に。 ローマ字と漢字の組み合わせの看板、絵と字の組み合わせが面白い。それと、日本は看板が非常に多いですね。電車の中の広告とかも含めると、どこでも文字があふれてると思います。 それと、字ではないのですが、電車の中のアナウンスってずっと止まらずに流れてますよね。そういう点でも言葉があふれてるな、と。
実は去年の夏に1ヶ月ほど八丈島に行っていたんですけど、あまりにも湿気が多くて、カメラが故障してしまったんです。だから最近は写していないんです。
執筆活動に専念するためです。築100年程度の古い家を借りて、そこにこもってずっと書き続けていました。看板の写真もとっていました。でも八丈島は看板が少なくて・・古いものはありましたけど(笑)。
1日で書き上げました。日本に来たばかりのころに書いたんです。9月に来日して、11月に国際センターで募集のポスターを見て、一気に書き上げました。いつもだいたいそんな感じです。 書きたいな、と思ったら1日中書いてるんです。書いている時に苦労したというのはあまりなくて、もう一気に書き上げる。 八丈島にいる時はもう「魚字」の時以上に書き続けていて、終わった時は腕が炎症を起こしてしまったほどだったんです。だから完成した時は、本当に嬉しい。「ああ、できた~」って。でも、その後文章を修正しなくてはいけなくて、それがさらに大変なのですが(笑)。
人から尋ねられても「○○出身です」って言わなくてもいいような、ごまかしていけるような、そういう存在になりたいんです。で、存在を変えるなら、字とか動物とか木とか自分が感動を受けることのできる何か、別のものになりたいという気持ちがあるんです。固定的ではなくて気軽に変わることができるものがいいですね。流れるものになりたい、そう思っています。
本当はもっと長くいたいんですけど…。3ヶ月の間にやりたいことはたくさんありますが、それで焦るとストレスになって、せっかくの残り時間がつまらなくなってしまうので…。研究したいことはたくさんあるし、外に出て日本に触れる時間ももっと欲しいし…。 難しいですね。

レナタさんが撮影した看板-2
これからも日本の言葉でいろいろ書いて行きたいですね。今は3つの言葉(母語、ドイツ語、日本語)を使って書いています。どれかひとつに限定するのは自分のためにならないので、今後もそのスタイルは変わらないと思います。
日本は故郷のひとつです。 すごく日本に惹かれます。今は日本にいますので、ドイツやクロアチアが懐かしくなったりもします。どこかに行くと、そこが好きになるんです。 帰国したら日本がすごく懐かしくなるだろうし、立教大学も懐かしくなるでしょうね。
| 立教大学特別外国人学生: 「特別外国人学生」は協定校や政府等の機関から委託され受け入れる制度です。学位取得を目的とせず、在籍期間は原則1年(半年在籍も可能)となっています。 2004年4月現在、立教大学には44名の特別外国人学生が在籍しています。 |