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概要

20150714rikkyo

本的にマーシャルの自由貿易擁護論を踏襲したものである。その後、ピグーは貿易論にあまり言及しなくなるが、不況の原因解明と解決策の提案を期待されて経済学者委員会のメンバーとなり、自由貿易論を主張したケインズと対立する。ケインズは当時の状況をデフレによる不況であると診断し、失業の救済策を4 つに分け、それぞれの特徴を検討した。平価切下げ、貨幣賃金率切下げも実行可能であれば効果はあるが、実際に実行することは困難であることから、望ましいのは一律10%の関税であるとケインズは主張した。ただしケインズは投資の増大による乗数効果に力点をおいており、この収入関税の主張は他の政策と比較した上での消極的な支持であるとみなすべきである。このケインズの保護貿易の提案に対してピグーは批判を行っており、その根拠として一度導入された保護主義は長期化する傾向があるという政治的な理由が強調された。ピグーは当時の失業の原因を実質賃金の調整不足にみていたが、実質賃金の調整不足は貨幣賃金率が硬直的であることに基づくと考えていた。これらの検討から、経済学者委員会でのピグーとケインズの対立は両者の不況の原因分析が異なるものであったことに起因するのではないかと考えている。報告 ▽服部正治氏(本学経済学部教授)「古典派経済学における穀物」【報告要旨】スミス、マルサス、リカードウは、穀物生産の問題を「経済学の一般原理」として論じようとした。スミスの時点では未だ、イギリスは穀物自給国・輸出国であった。自由貿易を行っても農業が存続しうる論拠としてスミスは、穀物輸送の困難さ、穀物の真実の価値(realvalue)という概念、穀物のエネルギー効率上の優位性、資本投下の自然的順序論を挙げた。しかしこれらの仮定は、「経済学の一般原理」からすれば恣意的な想定を含むものであったため、マルサス、リカードウらの批判を受けることとなった。スミス自身は商業社会を前提とする経済学では説明しきれない要素をあえて経済学で論証することを意図していた。マルサスの時代になるとイギリスは穀物の輸入国化した。マルサスは、スミスが挙げた4 つの論点のうち前者の2 点は誤りであるとしたが、穀物のエネルギー効率上の意義は人口論として、資本投下の自然的順序論は経済発展における地代の意義というかたちで経済理論に取り込んだ。しかし、自由貿易が行われると農業は安泰とはいえないという現実を前にして、しかも経済学者として国際分業の利益の正しさを否定できないマルサスは、経済学を越えた「得策policy」という概念を導入することで、自らの経済理論を変更せずに穀物生産の問題を取り込んだ。リカードウもイギリスの穀物の輸入国化という事実を前提にしていたが、彼は当時の多くの人々と共通して、自由貿易のもとでも人口増加のなかでイギリスは「一大農業国」にとどまるという認識を有していた。比較生産費説という経済学の論理を(恣意的に)徹底59