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概要

20150714rikkyo

次大戦後、「資本主義は成功ゆえに没落する」という有名な言葉を残しましたが、この言葉はゾンバルトの議論を下敷きにしているというのが、現在の経済思想史における一般的な理解になっております。私のゾンバルト研究が中断したもう1 つの理由は、ドイツで非常に優れた研究が出たということでございます。1 つは、1994 年にフリードリヒ・レンガーが、ゾンバルトの非常に優れた伝記を書きました。これは今日必須の文献です。それからもう1 つは、ドイツで社会学を勉強していた竹林史郎さんの学位論文『Die Entstehung der Kapitalismustheorie inder Grundungsphase der deutschen Soziologie』(ドイツの社会学の創設期における資本主義理論の成立)が出版されたことです。これは、シュモラーらの歴史学派からゾンバルトとヴェーバーの研究がどのように成立したのかを詳細に追求した大著です。ここには、私のシュモラー研究で十分に触れられなかったのですが、歴史学派の経済学者がマルクスとエンゲルスから非常に大きな刺激を受けているのではないかという大変面白い論点が展開されております。実は、今これを私と友人が翻訳しております。これも出版されたら、ゾンバルト研究あるいはヴェーバーの研究の必読文献になると思います。5.おわりに私の研究生活を振り返って印象深いのは、1970 年代の立教大学大学院経済学研究科には全国からたくさんの院生が集まり、私がいたころは確か80 人ぐらい在籍していたのではないかと思います。本当に切磋琢磨するエネルギーに溢れていて、非常に面白かった気がいたします。住谷ゼミでは、毎回ゼミ終了後に池袋に繰り出し、夜遅くまで真剣に議論していました。住谷先生はそうした談論風発を楽しんでおられ、貴重な指摘をいつもいただきましたが、われわれも時には先生を挑発したりしました。住谷先生も私の恩人です。小林先生には、研究者としての心構えを諭していただきました。いつも研究室に本を開いておき、1 日30 分でもいいからとにかく本と向かい合うこと、それから、まとめて書こうというのはやめ、こまめに書くこと、などのアドヴァイスは今も守り続けています。私が一番良かったと思うことは、自分の問題意識を大切にしたことだと思います。簡単に妥協しないことです。私は助手になってから博士論文を書く間にかなり悶々として、なかなか論文が書けない時期がありましたが、その時に経済学部のある先生から、あまり成果が出ないものですから、「田村くん、そろそろ違う分野に移ってみたらどう?」と言われまして、本当に恥ずかしかったのですけれども、そのぐらいなかなか論文が書けない時期が一時ございました。しかし、結局のところ簡単に妥協しなくてよかったかなとちょっと思っております。それから、これは柳澤先生からいつも言われたのですが、論文を執筆する場合に、研究史を必ず批判的に総括すること、つまり、先人のここが問題であり、ここを課題とするのだということを明記することを教えていただきました。これは研究のオリジナリティにかかわることです。これは私が途中で気づいたことですが、やはり最新の研究成果への目配りを怠らないということです。最後に「重要な研究成果についてつまみ食いはしない」ということを、特に若い研究者48