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概要

20150714rikkyo

本源的蓄積の理論、そこを批判しまして、ヨーロッパの経済史において、イタリア・ルネサンスのころの都市から資本主義が出てきたのだというのがゾンバルトの理解なのですけれども、これは「地代蓄積説」という有名な理論です。それから第2 巻「資本主義発展の理論」で、資本主義が発生した後、現代までどういうふうにして資本主義が発展してきたのかを記述しています。そこでは、かつてシュモラーが問題にした小営業とか手工業を駆逐して、商業資本や産業資本が大きくなっていくプロセスを歴史的に書いたわけですね。つまりゾンバルトは、メンガーのシュモラー批判を意識し、歴史と理論を組み合わせることによってシュモラーの実証主義を乗り越えようとしたわけです。ところで、「資本主義的精神kapitalistischer Geist」についてゾンバルトは、単なる金もうけの精神ではなく、企業を合理的に運営する精神であり、企業を組織する精神でもあると強調しています。ただゾンバルトは、この精神の歴史的由来をあまり説明しておらず、企業もかなり早い時期から大きな資本主義的企業という形態をとって進んできたと理解しておりまして、そこが後にマックス・ヴェーバーが批判することになるのだろうと思います。私はこの埋もれた初版を復元して論文を書いたわけです。その次の課題として、3,000ページぐらいにふくれあがった第2 版と初版を比較しようという作業を進めていました。全部読みましたが、この研究は中断してしまいました。私は今、大学長という仕事をしていますが、それ以前には副学長をやり、また学会の仕事などいろいろなことがありまして、忙しかったことも事実です。ただその一部の成果は、経済学史学会設立60 周年記念論文集『古典で読み解く経済思想史』(ミネルヴァ書房)に寄稿した「資本主義とエコロジー」で、ゾンバルト『近代資本主義論』第2 版についてちょっと書きました。この論文で面白かったのは、ヴェーバーとかゾンバルトが20 世紀初頭にエコロジー運動に関わっているという事実がわかったことです。ドイツでは1990 年代ぐらいから環境史の研究がものすごく盛んになっていまして、たくさん文献が出ています。歴史学派は環境問題にかかわったことで再評価されていることもわかりました。一般的にいわれていることですが、1905 年前後にヨーロッパで景観保護運動というものが出てきます。つまり、資本主義の発展にともなって、いわゆる公害が出てくるわけですね。川が汚れる、空気が汚れる、鉄道路線があちこちにひかれる、電柱が林立するなどが問題になります。経済発展の初期に起こってくるようなさまざまな環境破壊が生じてくるわけです。それに対して景観をもう一度保護・回復しようという運動が出てきて、これが今日のヨーロッパにおけるエコロジー運動の原点だといわれています。そこに実はヴェーバー、ゾンバルト、歴史学派の経済学者たちも入っているということが最近明らかになってきたのですね。彼らはこういう近代の市場経済体制を「資本主義」と呼ぶのですが、この資本主義という言葉は、特にドイツ語圏ではゾンバルト『近代資本主義』によって流布したといわれています。日本では資本主義というと、すぐマルクスという話になるのですけれども、ヨーロッパではそうではなくて、いわゆる社会主義とはちょっと違った形で市場経済体制を批判的に見るという視角がかなり早くから出てきます。というのは、この資本主義という言葉はもともとピエール・ルルーというフランス人が1850 年前後に初めて使ったといわれ46