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概要

20150714rikkyo

ような理解が非常に有力でございました。私ももちろん最初はそういうふうに思っていたのですが、博士論文執筆時にシュモラーが経済政策論争に触れている発言を実際に読むと、印象が非常に違ったわけです。そういう古色蒼然とした人物ではなくて、当時の近代化に対してもちろん前向きであって、彼自身は保護関税派と自由貿易派の中間的な立場をとっていました。後から大河内先生の社会政策学会把握には大きな誤解があり、ブレンターノもシュモラーも労働者の団結権付与にはともに賛成の立場だと分かりました。シュモラーは、当時ドイツ新歴史学派の代表者といわれ、社会政策学会の創設者・会長でもあり、またベルリン大学の総長までやった人です。彼の70 歳のときの大部の記念論文集がありますが、これも世界中からの寄稿があり、ある意味では19 世紀末の最も有名な経済学者の一人だといっていいのですね。ただ後世から見ると、オーストリア学派のメンガーと方法論争というのがありまして、それから後でヴェーバーらとの価値判断論争があって、それぞれシュモラーは敵役になりますので、結局その後急速に影響力を失ってしまったということになります。後から考えると、博士論文の執筆が研究の方向を決定したといえると思います。2.シュモラー研究への集中そこで私は博士論文を書いた後、もう少し歴史学派について本格的に勉強したいと思っていたところ、現在の札幌にある北星学園大学経済学部に1981 年に就職することができました。また就職した当時、記念論文集の企画がたくさんありまして、その執筆に誘われたのです。それで一つ一つシュモラーについて少し細かく実証的にやってみようということで、シュモラー研究を本格的に開始しました。最初に書いたのが、北星論集に発表した「初期シュモラーの社会・経済政策思想の展開「: 労働者問題」から『19世紀ドイツ小営業史へ』」(1984)です。この『19 世紀ドイツ小営業史』はシュモラーの初期の代表作で、これが非常に好評で社会政策学会が設立されるきっかけになります。この論文を書いた後に、前記の学位論文と一緒に『ドイツ経済政策思想史研究』(未来社1985)という論文集を出すことができました。出版にあたって小林先生と住谷先生に大変お世話になり、感謝しています。この『19 世紀ドイツ小営業史』ですが、実は先ほどの大河内先生がシュモラーを保守反動派だといったのは、この本の理解の仕方なのですね。これは700 ページぐらいある大著なのですけれども、私は全部読んだわけです。そうしたら、大河内先生は序論と結論しか読んでいないことがわかりました。中の650 ページを全部すっ飛ばしているのですね。それにちょっと気がついて、それでこの論文を書いたわけです。たしかにシュモラーは小営業を保護しようとか維持しようといっているのですが、それは、例えばギルドという昔ながらの小営業を維持しようということではなくて、当時のさまざまな技術革新とか、近代的な簿記とか、マーケティングだとか、そういうもの取り入れて小営業は、いわば近代的な市場経済に適応すべきだと主張するわけです。それを政府が後押しすべきなのだと。これは今日まで続いている議論だと思うのですけれども、つまり、資本・賃労働関係が成立してきて、小営業は全てだめになるのではなくて、例えば、今日でも中小企業問題とか42