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概要

20150714rikkyo

論が想定するような「一つの資産を他の資産と交換できるオプション」を実際に利用しながら海外展開をおこなっていた。(上述の視点B をふまえながら)これらの事例をみるかぎりでは、資産流動性の前提は一定の歴史的な背景をもっていたのではないかとも思えてくる。それにしても(上述の視点A をふまえるかぎりでは)、高橋(2006)が事業多角化に関連して指摘したごとく,多国籍化に関しても固定資本の重圧(資産回転率の低下)からまぬがれないのではないかとも思われる。たとえば、UNCTAD(2011)でとりあげられた米国企業のアップルは非出資型、外部委託のかたちでホンハイにスマホの組み立てをまかせていて、いわば撤退容易なかたちで組み立てをおこない、固定資本の負担を回避しているが、それにしても、業界全体としては、固定資本の負担がなくなるわけではないのであって、当該分野の資産回転率の低下傾向としてあらわれざるをえないであろう。4.おわりに最後に、まとめにかえて、冒頭で設定した3 つの問題それぞれにたいする答えを列挙しておきたい。答え① 「資産流動性」で流動的な企業観の視点の強さをあらわし、「資産回転率」で固定的な企業観の視点の強さをあらわすとして、多角化をめぐる2 つの仮説がある。岩村(1994)は流動的な企業観を想定し多角化の資産流動性の上昇の側面というメリットを主張し、高橋(2006)は固定的な企業観を想定し多角化の資産回転率の重圧の側面というデメリットを主張する。答え② 企業金融のリアルオプション理論の前提は流動的な企業観である。企業成長の多国籍化の内部化理論の前提は流動的な企業観である。答え③ (もし視点B をふまえるならば)たしかに流動的な企業観の想定には一定の現実的合理的な根拠があるのかもしれない。Brealey and Myers(2006)やStopford and Wells(1972)はオプション評価理論のメリットを合弁やライセンシング契約という柔軟な(流動的な)国際化との関連で把握している。(視点A をふまえるかぎりでは)しかしだからといって現代経済から固定的な企業観の問題が存在しなくなるわけではないであろう。海外現地の企業が負担するなど多国籍化のデメリット(資産回転率の重圧の問題)は残るのではないかと思われる。はじめに「企業金融を企業成長との関連でいかに把握するか、そのてがかりをどこにもとめるか」という問題を設定したが、以上3 つの問題の検証を通じて(事例、モデル、データの紹介を省略しているという欠点をもちつつも)次の結論が導き出されると思う。すなわち、「事業多角化をめぐる岩村(1994)・高橋(2006)の論点、事業多角化に関する万仲(1990)の指摘ならびにそれらから本報告においてこのたび新たに導き出された視点A、視点B が、企業金融(経済的レント、NPV)を多国籍化、グローバル化との関連で把握する場合にも一定のてがかりになりうる」という結論である。38