ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

20150714rikkyo

や多国籍化の実物投資へ適用するさいの前提は資産の瞬時的可逆性(さきほど買った資産をすぐにまた売ることができる)という想定である。オプション評価理論はたとえば[株式の購入]+[プットオプションの買い]が株価の下落にたいする保険になる場合のその価値を求めるものであるが、オプション評価理論を多角化や多国籍化の実物投資へ適用するさいの(つまりリアルオプションの)前提は売却可能な標準的な設備・売却不能な特殊な設備の想定などである。要するに、戦後米国の企業金融論はこれまで大きな流れとしては3 つの段階で展開されてきて、そしてそれぞれ証券投資の議論が実物投資の議論に適用されてきたが、そのさい特殊な前提(流動的な企業観という前提)がおかれてきたのである。宇沢(1977)は経済学の立場から新古典派経済学は生産要素の可塑性(各時点で必要におうじて時間・費用ゼロで生産要素のある用途から他の用途への転用が可能である)を前提としていると指摘する。また万仲(1990)は経営学の立場から事業多角化に関するO.E.Williamson の議論は流動的な企業観(市場からの一部取引の結合・統合(内部化)も、市場への一定事業の分離・放出(外部化)も、いずれも容易に可能である)を前提とする側面もあると指摘する。要するに、企業成長論としての多国籍化の議論に関連して確認しておきたいことは、事業多角化に関するO.E.Williamson の議論を多国籍化にも適用するさいには、やはり同様に万仲(1990)の指摘が妥当するのかもしれないということである。ここで問題となるのは、このような企業金融を企業成長(とくに多角化、多国籍化)との関連で把握するさいに直面する困難をいかにして克服するか、そのてがかりをいかにしてつかむか、という問題である。問題のポイントは、これらの前提(資産流動性という前提)を非現実的だといってこれらの理論を退けるのか、いやじつはなんらかの現代経済の特徴をあらわす現実的な背景をもっているのはないかと考えるか、いずれの立場をとるかである(視点B)。これはこれでやはりすぐあとの「問い③」につながってくる問題意識である。3.問い③について配布資料の「1.要約」の(2)に「他方で、証券投資の評価の前提条件と実物投資の評価の前提条件とは共通の歴史的な背景も存在する」と書き、配布資料の「1.要約」の(3)に「それにしても経済的レント(Brealey, Myers and Allen(2013)において正味現在価値net present value の源泉とされているもの)は、個々の企業の資産の転用(汎用)・撤退(売却)の容易性の程度だけではなく、業界全体の資産の回転率(総資本回転率)の高さからも説明されなくてはならない」と書いた。配布資料の「(2)共通の歴史的な背景」で2 つの事例を紹介した。Stopford and Wells(1972)におけるオプションとジョイントベンチャー(合弁)の事例、およびBrealey andMyers(2006)における自動車産業の柔軟な海外展開の事例の2 つである。Stopford andWells (1972)によると1960 年代米国ではオプション評価理論が想定するような転用(汎用)・撤退(売却)容易な資産を実際に利用しながら海外展開をおこなっていたという事例もみられる。Brealey and Myers(2006)によると日本の自動車産業はオプション評価理37