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概要

20150714rikkyo

る。また企業成長は最近の具体的な動きとしては多角化、多国籍化、海外売上高比率の上昇傾向というかたちをとっている。それゆえ本報告の主要な「問い」は「直接金融の比重の上昇傾向を多角化・多国籍化との関連でどのように把握するか」というものになる。ところで上述のごとく、岩村(1994)は、理論の問題として、資産の売却の容易さ(業績の悪化の場合、最初の工場から撤退して次の工場に移行していく)という資産についての特殊な想定(「資産流動性」の想定)を前提にして、関連し合わない事業同士のくみあわせによるリスクの引き下げを議論する。(岩村(199)では、理論的に、撤退・転用の容易性を前提として、証券投資の議論が実物投資の多角化(実物投資の分散投資)に適用されて、分散投資のメリットが結論づけられている)。他方で、高橋(2006)は、現実の問題として、多角化がうまくいっていないあらわれとして、1980 年代以降の総資本回転率の低下傾向を指摘する(「資産回転率」の推移)。(高橋(2006)では、実証的に、撤退・転用の困難性を前提として、総資本回転率の1980 年代以降の低下傾向が指摘され、実物投資の多角化(実物投資の分散投資)のデメリットが結論づけられている)。同じ企業金融論の立場から日本企業の多角化を評価しているにもかかわらずまったく異なる評価となっており、きわめて興味深い。このように多角化をめぐる企業金融論の岩村・高橋の論点が存在するのであるが、ところで多角化は単純にいえば複数の事業の展開であって、また多国籍化は単純にいえば複数の海外地域の展開である。そして複数の海外地域の展開である多国籍化は通常複数の事業の展開である多角化をともなう(Stopford and Wells( 1972)など)。それゆえ国際化(多角化×多国籍化)をめぐっても企業金融論の岩村・高橋の論点が存在するはずではないか、(複数の製品の議論に存在する論点は複数の地域の議論を考慮した場合でも再現するのではないか)というのが本報告の基本的な問題意識(視点A)であり、のちに「問い③」につながる問題意識である。2.問い②について配布資料の「1.要約」の(1)に「もし日本企業が外部の株主にたいして証券投資の基準で多角化や多国籍化の実物投資を評価・説明するのであれば、そのばあい証券投資の評価の前提条件と実物投資の評価の前提条件の違い(分割可能性の有無や転用(汎用)・撤退(売却)容易性の程度)に注意を払う必要がある。」と書いた。配布資料の「(1)前提条件の違い」に「実物投資や資金調達にポートフォリオ選択理論、CAPM、オプション評価理論が適用されるとき、そこでは実物投資や資金調達についての特殊な想定(分割可能性という想定、瞬時的可逆性という想定、売却可能な標準的な設備・売却不能な特殊な設備の想定など)が可能であることが前提とされている。」と書いた。ポートフォリオセレクション理論は要点を述べると資産の組み合わせが相関係数- 1 のとき投資収益率の確率分布の標準偏差で示されるリスクは最小になるというものであるが、ポートフォリオセレクション理論を多角化や多国籍化の実物投資へ適用するさいの前提は資産分割可能性(同一資産を2 倍買ったり2 分の1 買ったりできる)という想定である。CAPM は市場リスクと固有リスクを区別するというものであるが、CAPM を多角化36