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概要

20150714rikkyo

うのが何をもたらすのかということについて、コンセンサスが得られていないということの表れともいえます。本報告では、今紹介したような見方を順に検討しながら、経常収支とその赤字の意味について考えていきたいと思います。なお、2014 年から国際収支の変更が行われており、旧来の考え方を検討するという方法上、本報告でも旧来の表現と現在との表現が混在する箇所がありますので、ご留意ください(報告では主要な相違と変更についての簡単な説明が行われたが省略する)。2.経常収支の赤字化は外貨獲得手段の消滅を意味する?さて、赤字化に関する第一の懸念は、外貨が獲得できなくなるということに関連するものです。つまり、日本は無資源国であり、資源を輸入していく必要があるので、貿易収支の赤字化によって海外との決済に必要な外貨が維持できなくなるというものです。1960 年代、あるいは現代でも固定相場の下で経常収支赤字が通貨安を招き、為替介入によって外貨準備が減るとすれば、経常収支の赤字というのは非常に困った問題です。しかし少なくとも現代の日本では、黒字を貯めこんで赤字のときに吐き出すというような関係ではなくなっています。変動相場制度への移行以後、銀行部門が外貨を保有すれば、それに応じて大なり小なりの為替リスクを被ることになるので、銀行は必要以上の外貨を保有しません。また、外貨を獲得した輸出業者も、それを原材料や賃金、配当などとして利用しますので、数字としては記録されているでしょうが、現実のドルあるいはその他外貨が手元に残っている、貯まっているというような状態は基本的にありません。すなわち、民間部門は国際金融市場で支払手段を獲得するので、貿易で外貨を得る必要はないのであり、対外借り入れが円滑におこなえる限りにおいて赤字だからといっていきなり問題が生ずることは決してありません。現代においては、アメリカ以外の国では国際支払手段としてのドルの調達が必至ですから、“ 外貨獲得が必須である” ことは疑いないとしても、「外貨獲得手段の消滅あるいはそれによる経済的土台の崩壊」はないわけです。しかも、もし今述べたようなサイクルが回らなくなって危機が生じたとしても国際収支上は経常収支と金融収支との恒等式は常に成立しますので、国際収支あるいは経常収支の関係から、そうした危機を読み解くことはできないのです。ところで、こうした懸念と関連しながら、しかし全く逆に、経常収支赤字になっても対外資産が564 兆円ある(2010 年末)のだから、もし仮に年間の経常収支赤字が5 兆円あるとしても、それを取り崩していけば100 年近くまかなえる。よって、経常収支赤字になっても何ら問題はない、という楽観的な考えも存在します。確かに、経常収支赤字分だけ純資産は減るでしょうが、それは資産を売却して赤字の穴埋め、支払いに充てていくといった類のものではありません。たとえば、米銀預けがある場合には、経常収支赤字は対外資産、具体的には預金の減少として表面化するでしょうが、それは決して海外に保有する証券の売却等によって賄われるわけでないことは明らかです。また、支払いのためにドル調達が必要な場合でも、国際金融市場からドルを借入れるとすれば、それは資産の減少ではなく債務の拡大となります。つまり、赤字の場合でも、対外資産と負債が両建てて増えつつ、その差である純資産が減少していくことになります。29