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概要

20150714rikkyo

の帰結は、賃金低下になってあらわれている。端的にいえば、非正規化しているのは女性と若年男性で、その非正規化により平均賃金が下がっている。1 人当たり雇用者報酬を1995 年を100 とする指数でとると、賃金が低下したのは日本だけである。日本の平均賃金の低下の要因について、その約8 割が雇用の非正規化で説明できるという分析は、例えば日本総研の山田久氏がおこなっている。実質賃金指数を対前年同月比でみると、安倍政権では16 カ月連続してマイナスであり、安倍政権は賃下げ内閣というほかない。3.今野晴貴氏の講演今野晴貴氏は、ブラック企業問題とは何かについて、実際の相談事例を交えて報告された。ブラック企業の語源は、IT 技術者の方がインターネット上でスラングとして使い始めたところにある。2000 年代を通じて、政策的にも非正社員の正社員化ということが重大なテーマになってきたが、実はこの正社員の離職率が高止まりをしている。このように、正社員の雇用が変容してきた。それを背景として離職率が高い、あるいは、働き続けることができない、そういう現象が広がり、それを「ブラック」と呼ぶ人々が出てきたのである。ブラック企業の労務管理には、「選別型」と「使いつぶし型」がある。前者は、大量に新入社員を採用し、必要な人材だけ残して、後はいじめるなどの手法を用い、辞めさせる。後者は、過労死ラインを超えた働き方を要求しているというものである。このように、正社員といっても、その雇用類型が分岐し変質してきている。「ブラック企業」は、ただひどい企業だとか、ただ違法なことをしている企業だと考えられがちだが、実はそうではない。従来の日本型雇用は、高度な指揮命令権限と能力開発が組み合わされている、一つのシステムであった。ブラック企業は、この雇用システムに対する社会の信用を悪用している。終身雇用・年功賃金でもないのに、この高度な指揮命令権限だけが残存してしまっているのである。ブラック企業が多いサービス業の大半は、能力開発型の雇用システムに適していない。というのは、サービス業における店長や小売業、介護の労働者は、事実上、職種限定社員であり、職種が限定されているために、能力開発の余地が限られている。どんなに残業を長時間こなしたとしても、それで能力開発がされて給料が上がっていくというわけではない。年功賃金や終身雇用になじんでいないにもかかわらず、ある種のエリート的な働き方を強要されて、それが過酷労働を生み出してしまっている。当人も親も教師も、とにかく頑張っていけば能力開発をしてもらえるという前提で社会が動いている。もちろん、「頑張って報われる企業」であっても、昔から過労死などの弊害を生み出してしまうなどの問題は抱えている。しかし、「頑張って報われ、能力が開発される」というような企業と、ブラック企業では決定的な違いがあり、ブラック企業では、そもそも頑張っても意味がない。頑張る価値がないどころか、頑張ると自分自身の首を締めてしまう。このようなことが広がってくると、大きな社会的弊害を引き起こす。うつ病の蔓延と医療費の増加だ。もちろん、「病気になるまで働かせる」という行為も、個別企業としての22