立教大学 公開講演会 しょうがい学生支援室5周年記念講演会「立教と私-しょうがいのある学生の視点から-」 日時 2015年11月28日(土)13:30~15:30 会場 新座キャンパス 7号館3階アカデミックホール プログラム 1.報告、学生制作の映像上映 2.講演者 社会学部社会学科2年次 若杉 遥 理学部物理学科3年次 長田 直也 コミュニティ福祉学部福祉学科4年次 内山 涼 3.質疑応答:パネルディスカッション形式 主催 しょうがい学生支援室 サポート体制 手話通訳、学生スタッフによるパソコンテイク・移動サポート等 ※この講演会は、司会・受付・誘導・点訳など学生スタッフを中心に運営しました。 大島(司会)/ 皆さん、こんにちは。本日はお忙しい中、足をお運びいただき、ありがとうございます。ただいまより、2015年度立教大学しょうがい学生支援室講演会を開会いたします。  今年のテーマは「立教と私-しょうがいのある学生の視点から-」です。本日、司会を務めさせていただきます、立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科1年の大島康宏です。 西村(司会)/ 同じくコミュニティ福祉学部福祉学科1年の西村尚也です。 森(司会)/ 同じく日本文学専修3年の森千歳子です。よろしくお願いいたします。 ●写真 司会の3名が並んでいる(左端の学生は車いす利用)。大島さんがマイクを持ち話し、3名の向かって左後方に手話通訳の学生が立ち、手話をしている。 大島(司会)/ 講演に先立ちまして皆様にご理解をいただきたい点がございます。この講演会では、車いすを使用している方、視覚しょうがいや聴覚しょうがいのある方のために移動サポート、手話通訳、パソコンテイク、点字のパンフレットなどをご用意しております。そのほか、受付や案内など、私たち立教大学の学生が準備をしております。  それでは早速、講演に移りたいと思います。まず最初に、立教大学副総長の西田さんからご挨拶をいただきたいと思います。西田さん、よろしくお願いします。 ■開会の挨拶 西田/ 皆さん、こんにちは。立教大学副総長の西田と申します。本日は土曜日の午後にもかかわらず、このような多数の方々にお集まりいただきましたこと、感謝申し上げます。開会にあたり一言ご挨拶をさせていただきます。  立教大学のしょうがいのある学生への支援には長い歴史があります。20年ほど前より、学内にしょうがい学生を支援するネットワークを組織して、各部署で連携して支援にあたってきました。そして、5年前にしょうがい学生支援をより充実させる必要があるという声が上がり、総長室を中心に準備を進め、翌2011年度に本日この催し物を主催するしょうがい学生支援室を開設しました。しょうがい学生支援室の設置により支援の体制がより充実するとともに、いくつもの新しいプログラムが展開できるようになりました。この講演会もその1つです。  本日の講演会は、しょうがい学生支援室5周年を記念しての開催となります。「立教と私-しょうがいのある学生の視点から-」と題しまして、本学に在学するしょうがいのある学生たちが講演いたします。  このテーマは、しょうがい学生の発案により企画が始まったものと聞いています。これまでの活動を振り返りつつ、学生の講演を通して、大学において必要な支援や配慮とは何か。支え合い、共に学び合うキャンパスとは何かを考える機会になれば幸いです。  この講演会が、運営する学生スタッフを含め、ここに集う皆さんにとって実り深いものになりますことを祈念いたしまして、開会の挨拶にかえさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ●写真 マイクを持ち開会の挨拶をする西田氏と、その左後方に立ち手話通訳をしている学生。 西村(司会)/ 西田さん、ありがとうございました。続きまして、しょうがい学生支援室の佐伯さんより、しょうがい学生のサポートについてのご報告をしていただきます。その後、DVD上映へと移りたいと思います。DVDにつきましては、現代心理学部映像身体学科2年の川縁芽偉子さんを中心に作成いたしました。ぜひご覧ください。  それでは、まず初めに佐伯さん、よろしくお願いします。 ■立教大学のしょうがい学生支援 佐伯/ しょうがい学生支援室専任職員の佐伯美佳と申します。よろしくお願いいたします。今年でしょうがい学生支援室は5周年を迎えました。私はしょうがい学生支援室を開設した2011年からこの部署に着任しております。それでは、立教大学の支援体制や支援室ができてからの活動を中心に報告をさせていただきます。  まずは立教大学におけるしょうがい学生支援の歴史、体制についてお話をいたします。立教大学は、戦前から視覚にしょうがいのある学生を受け入れてきた記録があり、1970年代以降、視覚および聴覚しょうがいの学生が複数在籍するようになりました。学生からの希望や意見はそれぞれの学部や窓口で受けとめて対応をしていましたが、もう少し課題を共有して連携しながら対応していく必要があるという大学の動きがあり、1994年に「身体しょうがいしゃ(学生・教職員)支援ネットワーク」が発足されました。今でもこの支援ネットワークは発展的に存続しており、全学部の代表の先生と複数の教職員によって構成される大きな組織になりました。画面の写真は会議の様子ですが、普段はこの中の必要なメンバーが学生の面談に同席をしたり、窓口で対応したりという支援へのかかわりを持って活動しています。  さらに、2011年にはしょうがい学生支援室が開設されて、より専門的に、また、直接、学生と接しながら支援をしていく体制が整いました。写真にあるように開放的な窓口を設けて対応を開始することができました。また、同年には「立教大学しょうがい学生支援方針」を策定して、立教大学として支援の方向性を定めることができました。 ■支援室開設以降の体制 佐伯/ それでは、支援室ができてからどのような活動をしてきたか、報告いたします。まず支援室が開設される前まで、どのような対応があったかについて説明をします。既に複数のしょうがい学生が在籍していたこともあり、授業支援の各種対応や支援機器の購入、そして学習設備を整えるなど、大変早くから取り組まれていました。  また、現在、「学生サポートスタッフ」と呼んでいる授業時におけるサポート学生も以前は「ボラバイト」と呼んで、ボランティア精神で活動する有償スタッフとして既にサポート活動が開始されていました。  また、学生部やボランティアセンターを中心に、点字や手話などの各種講座も開催され、施設面におけるバリアフリー対応や、学内の調査なども進められている状況でした。  このように、既にしょうがい学生の修学に関する各種支援は行われて、また整いつつある状況でした。そして、それらは担当する部署がそれぞれ知識を出し合って取り組まれているものでした。 ●写真 マイクを持ち話す佐伯氏のアップ。 佐伯/ しょうがい学生の増加と対応の複雑さ、専門性の必要性から、支援をコーディネートする部署および経験と知識のある専門職が必要となり、2011年度にしょうがい学生支援室を開設するに至ります。  支援室ができた後は、それまでの積み上げから修学支援は継続しながらも、さらに新しい取り組みを始めました。  例えば、専門知識のあるコーディネーターの尽力により、それまで手書きのノートテイクが中心だった聴覚しょうがい学生サポートにパソコンテイクを導入しました。オープンキャンパスでは、模擬授業などで大学の支援を体験してもらったり、受験生からの相談を受けられるようにし始めました。キャリアセンターと協働で卒業生を招いて、しょうがい者枠での就職活動や、勤務先での配慮などを話してもらう懇談会を始めました。東日本大震災の影響も受け、一人で避難が難しい学生を対象に、緊急時対応について具体的な検討を始めました。支援を学外の方にも広く知っていただきたいという思いで、公式Facebookを昨年立ち上げました。現在、350名を超える購読をいただいています。教職員を対象とする啓発の機会がそれまではほとんどありませんでしたが、回数や内容も充実させ、展開を始めました。  学生による活動は、授業支援以外にもいろいろとあります。その中でも大きな目玉が本日の講演会の運営スタッフです。日ごろサポートする、される立場の学生が一緒になり、講演会の成功を目指して取り組んでいます。この取り組みは、2012年の講演会から本格的に開始しました。今日もたくさんの学生スタッフが事前準備から頑張って取り組んでいます。皆さん、最後まで頑張りましょう。  これらの新たな取り組みは、支援室だけではなく、支援ネットワークの教職員の協力もあってできたものばかりです。  さて、現在、立教大学が支援を行っているしょうがい学生の人数を報告いたします。これは支援の希望の申し出のあった学生の数のみです。支援室ができた2011年には、その窓口開設のインパクトでしょうか、前年より増えているのがわかると思います。その後は、大体15から20名ほどを推移しています。そして、本年度から発達しょうがい学生の支援が開始となり、一気に対象者が増加しました。11月10日現在で、今年の支援対象者数は31名です。 ●写真 スクリーンの前に立ち、スライドを見ながら説明する佐伯氏。スライドには、しょうがい学生の人数の推移を示すグラフが映し出されている。 ■今後に向けて 佐伯/ 今の報告からわかるとおり、今後に向けては、多様なニーズの学生に対応していく支援室、そして、立教大学である必要があります。今年度から開始した発達しょうがい学生のニーズも一人一人違います。対応も一人一人違いますので、コーディネーターを中心に、支援内容を検討し実施していくことが求められます。  また、これまでに支援した実績のないようなニーズの相談も、受験前、入学前を含め、毎年入ってきます。多様な学生を受け入れ、共に学び、共に成長するキャンパスを目指し活動していくことが求められます。  そして、新たな取り組みを行っていく一方で、私たちには忘れてはならない考え方があります。その1つが、2011年策定の支援方針の中に掲げられた基本姿勢です。  1点目、本学しょうがい学生支援は、支援を受ける側、する側という一方通行のサポートではなく、お互いが学び合う双方向の活動とします。2点目、しょうがいの有無にかかわらず、支援にかかわる全ての学生が共に学び、社会で共に生きていける人材へと成長できるよう支援します。3点目、しょうがい学生支援を通して、大学全体の教育力、学生支援力の向上につなげます。以上3つを私たち教職員、そして学生たちと共有し、ぶれずに持ち続けることがとても大切だと考えています。  以上をもちまして、立教大学のしょうがい学生支援報告を終わらせていただきます。今回は報告ですので、もしご質問がありましたら、講演終了後に個別にいただけたら幸いです。ご清聴ありがとうございました。 ■サポート活動DVDの制作 佐伯/ 引き続きご紹介にもありました、立教大学現代心理学部映像身体学科2年次学生の川縁芽偉子さんが中心となって制作したDVDを上映したいと思います。立教大学で現在行われている授業サポートの様子、学生の様子を映像とナレーションから感じていただきたいと思います。約10分程度のDVDです。一部まだ編集が未完了のところがございますが、そこはぜひ温かい目でご覧いただければと思います。本日は、特別に、字幕はパソコンテイクの字幕、ナレーションは学生による生のナレーションで行いたいと思います。どうぞご覧ください。 (DVD上映) ●写真 DVD上映のスクリーン写真。タイトル「主な4つの支援」の下に、「音声ガイド」「移動サポート」「ポイントテイク」「パソコンテイク」と書かれている。 大島/ 続きまして、本日のメイン講演でありますしょうがいがある学生による講演に移りたいと思います。  本日は、視覚しょうがい、肢体不自由、聴覚しょうがいの3名の学生が大学生活などについてお話をいたします。  まずは、社会学部社会学科2年生の若杉遥さんです。若杉さんには視覚しょうがいがあります。そして、2012年のロンドンパラリンピックの金メダリストです。今日は、大学生活と合わせて、そのあたりについてもお話をしてくれるのではないでしょうか。それでは、若杉さん、よろしくお願いします。 ■講演1 若杉 遥 若杉/ ただいまご紹介にあずかりました若杉と申します。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。つたない話ではありますが、最後まで聞いていただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。 ●写真 講演する若杉さんのアップ。背後にスクリーンがあり、黒背景に白文字で講演タイトルと講演者氏名が表示されている。 若杉/ 本日は「立教と私」というテーマでお話させていただきます。お話にあたりまして、大きく2つに分けてお話したいと思います。1点目は、私の生い立ちについて。2点目は、立教大学での学びについてです。  それでは、本題に入る前に私の自己紹介を少しさせていただきたいと思います。私は現在、立教大学社会学部社会学科2年に在籍しています。一口に視覚しょうがい者と言っても、人によって見え方はさまざまです。私は「全盲」と呼ばれる視力ですが、実際のところは、左目がゼロ、右目が「手動弁」と言われる程度の視力ですね。「手動弁」とは、目の前で手を振ったときに、その手の動きがわかる程度という意味合いの視力です。そのため、部屋に明かりがついているかどうかや、目の前を人が通ったときに、その人影などを何となく感じることができます。  今の視力には、中学校2年生の時になりました。生活面においては、文字は点字文字を使用し、歩行の際は、「白杖」と呼ばれる白い杖を使って歩行しています。 ■生い立ち 若杉/ それでは、まず私の生い立ちについてお話したいと思います。私は、東京都青梅市出身です。その後、父の仕事の関係で宮城県に引越しをしたため、小学校は宮城県の普通小学校に通っていました。その後、再度引越しがあり、東京に戻ってきたため、中学校は東京都の普通中学校に入学しました。その後、視力が低下したため、中学校2年生の8月ごろから、盲学校の通級制度という制度を利用し、週2日は盲学校で、それ以外の日は地元の中学校で勉強しました。その後、11月に正式に東京都立八王子盲学校に転校しました。  私が視覚しょうがいになった原因は、線維性骨異形成症という病気です。この病気は、視神経のまわりに骨ができ、その骨が視神経を圧迫することで視力が落ちてしまうという病気です。中学校1年生のときにこの病気だとわかり、気づいたときにはすでに片目が見えていない状態でした。その後、治療を受けましたが、思うような結果が得られず、中学校2年生のとき今の視力になりました。 ■「盲学校」=暗い? 若杉/ 2年生の11月に盲学校に転校したと言いましたが、盲学校に転校するということで、自分自身の中に葛藤がなかったわけではありませんでした。当時の私の盲学校という場所に対するイメージは、暗い人がたくさんいるというものでした。また、盲学校に行くということは、自分自身のしょうがいを受け入れなければならないということでもあり、また、見えていない人と私というのを一緒にしてほしくないという思いもありました。  しかし、実際に盲学校に通い始めると、そのような私のイメージは変わりました。特に印象的だった出来事として2つあります。1つ目は、全盲の先生との出会い。2つ目は、ゴールボールとの出会いです。  1つ目の全盲の先生というのは、黒田先生という私の社会科を担当してくださっており、また一方で、ブラインドサッカーと呼ばれる視覚しょうがい者サッカーの日本代表選手でもある先生との出会いでした。全盲にもかかわらず何でもできる先生の姿に衝撃を受け、また、進路指導でもあった先生から、優しく、時に厳しい指導を受ける中で、教師としても、また、一競技者としても憧れる存在となりました。  2つ目は、ゴールボールとの出会いです。ゴールボールは視覚しょうがい者スポーツの1つで、18m×9mのコートに目隠しをした状態の選手3人が入り、中に鈴の入った重さ約1kgのボールを転がし合い、幅9mに設置されたゴールに得点を入れ合うというスポーツです。中学校3年生のときに体育の先生に紹介していただき、始めました。ゴールボールと出会ったことで、見えなくてもスポーツができるということを知り、スポーツができる楽しさを改めて感じることができました。  充実した中学校生活でしたが、物足りなさも感じていました。それは友人関係の面です。地方の盲学校では生徒数が少なく、特に私の学年は私1人だけだったため、同学年の友人がいませんでした。もっと友達が欲しいという思いから高校受験を決意し、高校は筑波大学附属視覚特別支援学校高等部普通科を受験し、合格することができました。 ■高校時代の思い出 若杉/ 高校時代の思い出はと聞かれると、毎日、部活動に精を出していたということ。また、高校2年生のとき、ゴールボール競技で2012年ロンドンパラリンピックに出場し、金メダルを獲得したということです。ロンドンパラリンピックの出場を通し、人間的にも成長することができましたし、また、先輩方の姿を見て、今後、私がなりたい姿というものを具体的にイメージすることができるようになりました。 ●写真 情報保障(パソコンテイク)でノートパソコンのキーボードを打っている学生の手元。パソコン画面には、黒背景に白文字で講演者の話している内容「高校時代の思い出」の冒頭が表示されている。 若杉/ また、高校3年間の目標として、本当の視覚しょうがい者になるという目標を立て、勉強や部活動のほか、点字の読み書きや歩行練習などに取り組み、見えなくても工夫次第でできることはたくさんあるということを感じるようになり、自分に自信が持てるようになっていきました。  その後、大学受験を考えるようになり、もっと広い世界に出たいという思いと、高校の現代社会の授業を受けたことで社会学という分野に興味を持ち、立教大学社会学部を自由選抜入試で受験することにしました。受験は無事に合格することができ、立教大学に入学することができました。 ■大学で受けているサポート 若杉/ それでは、次に立教大学での学びについてお話します。私は現在、支援室から主に4つのサポートを受けています。1つ目は移動サポートです。これは授業と授業の間の教室移動をサポートしていただいています。2つ目は、音声ガイドです。図や絵、写真などが多い授業の際に、サポートの学生の方にそれを説明していただいています。これは今学期から受け始めました。3つ目は、テキスト化です。紙媒体での文字をそのままの形で読むことができないため、データに変換していただき、読める形で提供していただいています。このサポートにつきましても、今学期から学生サポートスタッフの方にテキスト化をお願いしている教科があり、大変助かっています。4つ目は、点訳です。これは主に語学の授業の際に、その教科書を、点訳を専門とする学外の方にお願いをし、点字にしていただいています。支援室からのサポートを受けることで、充実した大学生活を受けられていると感じています。この場を借りてお礼を伝えたいと思います。ありがとうございます。 ■課外活動 若杉/ 学内の活動としましては、サークル活動にも取り組んでいます。今年からボランティアサークルに所属しており、まだ活動にはあまり参加できていませんが、活動を通して人と人との輪が広がることに楽しさを感じています。また、競技も続けており、今月開催されたゴールボールアジアパシフィック選手権に日本代表として出場し、金メダルを獲得することができました。そのため、来年開催されるリオデジャネイロパラリンピックの出場権を獲得することができました。今後も頑張っていきたいと思っています。 ●写真 壇上で講演する若杉さんと参加者を映した会場全体の写真。講演者から見て右前方にパソコンテイクの文字を表示するスクリーンがあり、その手前に手話通訳者が立って通訳をしている。 ■大学入学後の変化 若杉/ 大学入学前と入学後の変化という点につきましては、入学したばかりのころは、自分はどのようなことを助けてほしいのか、これは頑張ればできることなのか、それとも視覚的に難しいことなのかということを判断することにとても難しさを感じていました。入学して約1年半が経過し、自分のニーズの把握や、それを伝える能力が身についてきたと感じています。また、広い世界に出たいと思って入学した大学でしたが、最初は人の多さに圧倒されているばかりでした。しかし、今ではいろいろな人がいて、その一人一人の個性というものを感じられるようになり、それを知ることに楽しさを感じられるようになってきました。 ■今後の目標 若杉/ 立教大学は、私に物事を多面的に見る力と、その重要性、またその方法を教えてくださっていると感じています。また、私がこうしたいという思いに対し、大学の先生方、支援室をはじめとする職員の方々、友人などが助けてくださり、応援してくださることで、支えられているなと感じています。  将来につきましては、まだ具体的な進路は決まっていませんが、残りの大学生活を通して、自分の進みたい道というものを決めていきたいと思っています。  最後になりますが、私が入学したとき、大学4年間を通して達成したい目標というものを決めました。それは、視覚しょうがいというしょうがいを持っているため、普段与えてもらうという立場になることが多いのですが、与えてもらってばかりでなく、何かを与えられるような人間になるというものです。今の段階でまだ達成できたとは思っていません。残りの大学生活を充実させることで、人間的にも成長し、この目標を達成できるように頑張っていきたいと思っています。  以上で私の話を終わります。ご清聴ありがとうございました。<場内拍手> 西村/ ありがとうございました。  続きましては、理学部物理学科3年の長田直也さんです。長田さんは肢体不自由で、電動車いすを使用されています。物理学科では、実験科目やレポートなどで毎日お忙しいそうです。それでは、長田さん、よろしくお願いします。 ■講演2 長田 直也 長田/ 紹介にあずかりました理学部物理学科3年の長田直也です。パラリンピック金メダリストの後ということで、すごくやりづらいのですけれども、皆さん気を楽にして聞いてください。 ●写真 電動車いすに座り講演する長田さんのアップ。目の前にノートパソコンを置いた机がある。 長田/ まず、私の病気についてなのですけれども、脊髄性筋萎縮症という病気、等級でいうと1種1級で、一番重い病気を生まれつき持っていて、上下肢不自由という感じです。進行性の病気なので、小学校に入る前までは車いすに乗り降りすることもできたのですが、どんどん力が弱くなって、今では握力も1kg無いぐらいになってしまい、一人で生活するのがもうほぼ無理で、常に電動車いすで生活しています。これからもちょっと落ちていくかなという感じです。 ■高校までは普通校へ 長田/ ただ、生まれつきの病気だったのですけれども、親の意向で、小中高と特別支援学校には行かずに公立の普通学校に行っていました。公立の学校といっても、全部がバリアフリーではなくて、バリアフリーなところを選んで行っていて、中学校はそのため毎日車で送ってもらっていました。小中学校は義務教育なので、教育機関がサポートしてくれるのですが、高校となると自分で選んで受け入れてくれるかどうかを確認しなくてはいけません。結構な数の学校を訪ねたのですが、受け入れを許可してくれたのが、実はたった2校で、その1つの都立戸山高校に通いました。知っている方もいるかもしれないですが、この高校は乙武(洋匡)さんの出身校で、そういうこともあって受け入れに柔軟でした。  学校での介助の話ですけれども、区や都に非常勤講師という形などでつけてもらって、補助金と自費でのお願いをしていました。これは多分、あまり前例がなかったので、最初に前例をつくって、それをこれから利用できる方ができたと思うので、その点はすごくよかったと思います。 ■普通校での壁 長田/ ですが、普通学校に行っても、何百人何千人という健常者がいる中で、自分一人だけ電動車いすに乗っているというのは、ものすごく浮いていました。思い出してほしいのですが、小中高校というのは、友達になるきっかけが体育で一緒にスポーツをしたり、休み時間に遊んだり、帰り道に寄り道をしたりして仲良くなるケースが多くて、自分は送り迎えとかも親に時間で来てもらっていたので、ほとんどというか、全く友達ができずに高校まで過ごしていました。  その後、大学に入ったのですけれども、大学に入った理由が一言で言うと近かったからです。本音を言うと、しょうがい学生支援室が充実しているとか、そういうことを全く知らずに、ただ僕の家から立教の池袋キャンパスが近いからという理由で入りました。  それでも入るのにちょっと壁があって、当時、iPS細胞というのがすごいブームというか、流行っていて、僕もそういう研究をしたいなと思って、生物系の学科に入学したいと申し入れました。手作業とかがすごく多かったのでちょっと厳しいということで、第2希望の理学部物理学科に普通に受験して入学しました。 ■大学に入って変わったこと 長田/ 高校とかでは友達がいなかったのですけれども、大学が近いという理由でものすごくメリットがあって。中学校、高校より実は大学の方が近くて、自分も両親ともに通学する手間がなくなって時間がふえました。帰り道に、例えば友達と買い食いしに行ったり、カラオケに行ったり、皆さんはもしかしたら当たり前に経験していたことかもしれませんが、そういうのを大学生になって初めて経験して、とてもよい人間関係が築けるようになりました。これは、今年の夏に友達でバーベキューに行った写真です。男だけですごくむさかったのですけれども(笑)。 ●写真 スクリーンの前で講演する長田さん。スライドには、「いざ大学にはいると、、、」の文字と、テントの中でバーベキューをする3名の男性の写真が映し出されている。 ■大学で受けているサポート 長田/ ここからメインテーマとなる「立教と私」ということで話していきます。入学してからも、大学にはすごく多大なサポートを受けさせていただいています。まず、基本的に受けているサポートは、学生による移動サポートと、専門のヘルパーの方の補助を受けています。移動サポートというのは、教室で荷物を出し入れしてもらったり、机の配置を変えてもらったり、移動中に人混みをかき分けてもらったり、そういうことをしてもらっています。それに加えて、専門のヘルパーの方には、主にトイレ介助だったり、あと、姿勢、自分の座る位置を直してもらったり、そういうことをうまく使い分けながら大学生活を送っています。この費用も上限はあるのですが、基本は大学に負担していただいて、ほぼ健常者に近いように大学生活を送れています。  ほかにも、大学生活を過ごす上で結構必要な設備とかもお願いをしています。例えば、多目的トイレに移乗台を設置していただいたり、雨の日は車で来るのですけれども、駐車場にスペースを確保しておいてもらったりしています。それでも結構バリアフリーではない設備があって、例えば、階段でしか行けない教室だったり、スロープが設置できない段差があったり。そういうのも、教室を変更していただいたりするなど、いろいろ工夫をして過ごしています。  大学側もどんなサポートが必要かというのは、かなりわかっていないと感じています。とにかく積極的に相談してみるということが大事で、いろいろ相談してみると、例えば、僕が設置をお願いした移乗台を後輩の方が使ったりして、どんどんそういう過ごしやすい状況ができています。そういういい循環が生まれると思うので、あまり偉そうなことは言えないですが、皆さんもどんどん積極的に、今度は下の世代が生活しやすいように、行動してみるのがいいと思います。僕も上の世代が支援室をつくってくれたり、そういうので助かっているので。  他に、奨学金などの支援が、本音を言うとかなりうれしいです。しょうがい者学業奨励奨学金とか、竹田鐵三神父奨学金というしょうがい学生向けの奨学金があったり、あと、これは単なる自慢、もうほぼ自慢なのですけれども、学業優秀者に贈られる、理学部2年生から4年生の物理学科で1人しか贈られない奨学金とかもいただいています。ありがとうございます。  実はこの写真、右側に僕がいるのですけれども、左側にも車いすに乗っている文学部の学生がいます。言いたいのは、しょうがい者だからといって、べつに大学の勉強はすごく大変だよということは全くなくて、同等とか、もしくはそれ以上に勉強とかも全然できると思います。 ■就職に向けて 長田/ あと、就職に関して少しだけお話したいと思います。やはり大学卒業だと、しょうがい者でも就職の幅がすごく広がると思いますし、あと、大学から結構、しょうがい者向けの就職の情報提供とかもあります。その1つに、日本IBMという会社のアクセスプログラムというインターンシップ、就業体験みたいなものがあって、実は今年、半年もの長い間、参加しました。これは、しょうがい学生とか、その卒業生のみを対象にした就業体験で、これに行ってすごくよかったのは、ほかの大学のしょうがい学生との交流もあったし、自分がもし今就職したときに、どんな感じになるかというのを身をもって経験できたことです。もしかしたら、来年以降もこのプログラムがあると願っているので、今のしょうがい学生だったり、来年以降、しょうがい学生になる方、もしくは卒業生でも参加できるので、ぜひ、機会があったら参加してみてください。ネットで調べてチェックしてみてください。 ●写真 スライドを見ながら講演する長田さん。 ■専門分野の研究について 長田/ あと、自分の大学での勉強の話を少ししたいのですが、大学では素粒子という、原子とか分子よりもっともっと小さい分野から、宇宙、例えばブラックホールの仕組みとか、幅広く勉強しています。実験の授業とか、今、写真に写っている授業もあって、これは、例えば放射線という目に見えないものをどうやって測定するかとか、そういう結構小難しそうな実験をしています。  結構、勉強が大変で、課題やレポートがたくさんあって、今年の春学期の4カ月だけでレポートを300枚近く書いていて、毎日、卒論をやっているような気分で1年生から過ごしています。でも、結構楽しいから続けられていて、今後は、やっぱりその研究をもう少し進めるために、立教大学の大学院で修士号を取りたいなと思っています。  立教大学の大学院には結構すごいことがあって、例えば、実際に宇宙望遠鏡を飛ばしている研究室があったりします。何かすごく男のロマンがあって。とても楽しみです。やっぱり勉強することがサポートをもらっている1つの恩返しだと思っているので、これからそういう勉強も続けて、宇宙とかの研究をしていきたいなと思っています。  ご清聴ありがとうございました。<場内拍手> 森/ 長田さん、ありがとうございました。  最後に講演していただくのは、聴覚しょうがいを持つ学生、内山涼さんです。福祉と教育、両方の学習を両立されており、学外でも積極的に活動され、努力されています。それでは、内山さん、よろしくお願いします。 ■講演3 内山 涼 内山/ ただいまご紹介をいただきました、内山涼と申します。今日はよろしくお願いいたします。コミュニティ福祉学部福祉学科の4年生です。  まずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は1992年7月30日に生まれました。23歳です。しょうがい名は、感音性難聴というしょうがいを持っています。聴力にしますと、右耳100dB、左耳120dB以上ということで、補聴器は右耳だけに使用しております。左耳は全く効果がありませんのでつけておりません。 ●写真 講演する内山さんのアップ。手話で講演をしている。 内山/ 趣味は、旅行です。今までに日本国内いろいろ行きまして、食べ物や風景、町並みなど、いろいろ見て楽しんできました。今後は海外旅行も視野に入れています。楽しみです。 ■大学入学前までの経歴 内山/ それでは、まず立教大学に入る前のお話をさせていただきます。ご覧いただいてわかるかもしれませんが、私は赤ちゃんのときに感音性難聴という診断を受けました。そして、東京都立立川ろう学校に入りました。乳幼児クラス、そして幼稚部と進んできました。そのときの立川ろう学校は、当時主流だった聴覚口話法という教育が主流でした。これは、聞こえる人たちと同じようにする。しゃべれるように、そして聞こえるように、という教育です。ですので、ろう学校ですが手話を使っておらず、手話というものは全くわかりませんでした。  幼稚部に通っていたときに、私は並行して地域の保育園にも通っていました。ですので、小学校進学前は、聞こえる世界、そして聞こえない世界と2つの世界を行き来していました。  そして、小学校進学の際には通常の学校に進学することを決めました。中学校は私立中学校に入りました。男子校だったのですけれども、男子だけの生活ということで、女子は全くいませんでした。高校は東京都立の高校で国際学科を学びました。高校では英語や国際的な学びということで、文化や宗教など、幅広く国際的なものを学べる学科となっていました。  そして、その後、立教大学のコミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科に入学し、3年生のときに福祉学科に転科をしました。 ■聞こえないのは自分だけ 内山/ このように幼稚部卒業後はインテグレーションということで、聞こえる人たち、通常の学校にずっと行っていたということになります。ですので、高校までは「ろう」や「ろう学校」というものはよくわかりませんでした。そういう環境で育ってきました。  立教大学に入学する前までということでまとめますと、ろう学校の幼稚部卒業後はずっとインテグレーションで通常の学校に通っていましたので、聴覚しょうがいを持っている学生は私一人でした。ほかはみんな聞こえました。ですので、ほかに聞こえない仲間がいるということを知りませんでした。学校生活のときには、やっぱり自分ができないことというのは顕著にあらわれていましたので、とても大変でした。 ■通常の学校での苦しい日々 内山/ まず授業の方法ですが、先生が話をしている口の形を読んで内容をつかむ、「読唇法」という方法で授業を受けていました。読唇法ですので、当然全ての内容がわかるわけではありません。何を言っているかということに集中してしまい、勉強の内容、本来の目的である授業内容を理解するというところまでには至りませんでした。そのあたりは独学というか、教科書、参考書を用意して勉強するような方法をしていました。例えば、高校のときですと、わからない部分があったときには、先生に話をしても、「そこはわからない」、「知りません」、「そういうサポートはできません」というような対応をされ、先生に期待することをあきらめました。  そういった生活を通して、自分は誰なのか、自分は何者なのかということを悩んでいた時期でもあります。そういう意味では、聞こえる人たちの中では音楽を聴いたり歌ったりという文化もあります。また、英語を聞いて発音をするということもありますけれども、「聴文化」といいますが、聴者にとっては当たり前の生活が、聴覚しょうがいの私にはなじまないこともあります。  ですので、自分ができることというのがわからなくなっていた時代でもあります。私はしょうがいがあるからだめなのだというネガティブな思考に陥っていました。そういった学生生活を過ごしておりました。 ■立教大学へ 内山/ そのような状況の中で、高校3年生で進学を考えたときに、自分の中では、高2のときに福祉の授業が高校にあったのです。最初は福祉のことを漠然と、その授業を受けてみようかなと思ったのがきっかけだったのですが、その授業を通して福祉の面白さというものを実感しました。そして、しょうがいを持つ人たちや、福祉制度や福祉政策について学ぶということに興味を持ちました。  そんなところから進学の方向が決まったのですけれども、本格的にそこから受験勉強を始めました。その結果、立教大学を一般入試で受けまして、奇跡的に受かりました。  立教大学では、福祉の政策を学ぶことができて、しょうがい学生支援室もあるということで、また、日本手話の授業も取れるということで興味を持ちました。高校までは当然、手話はわかりませんでしたが、高校生のときにあるイベントで初めてろう者と会ったのです。そして、手話というものを知り、手話に魅力を感じました。大学に進学したら必ず手話を勉強したい、学びたいと思っていましたので、この立教大学の中に、ろう者が手話で授業を教えており、その授業をぜひ取りたいという思いを持って進学を決めたわけです。 ■何事にも「挑戦!」 内山/ 立教大学に入学した後の生活について話をします。私の学びは何かということを振り返ったときに、福祉学科に今在籍していて、福祉の勉強と教職課程を並行して取っているので教育についても勉強しています。 ●写真 スクリーンの前で 講演する内山さん。スライドのタイトルは「私の学び=福祉+教育+挑戦」。「+挑戦」のみ赤文字。 内山/ そして、大学の中では、「挑戦」というものを大事にしようと思って勉強してきました。大学1年のときには、積極性がなかったのですね。普通に勉強できればいいかなあ、ぐらいに思っていたのですけれども、しょうがい学生支援室にかかわるようになり、できることはやるということ。そして、やりたいことをやろうという気持ちになりました。もしできないところがあれば、そこは助けるということを言ってくださった人がいます。そのおかげで、私自身も強くなれて、何事にも挑戦していけるようになりました。  大学2年のときには、キャリアセンターのおかげで文部科学省の特別支援教育課でインターンシップを経験することができました。文部科学省と言えば国の機関ですけれども、どういうことをしているのか、どんな仕事をしているのかを知ることができました。そして、特別支援のあり方を文部科学省で決めているということで、それを肌で感じることができました。インターンシップの食事のときも全部食事が出たのでラッキーと思っていたのですけれども、とても優しい文科省の方たちでした。ろう者でも構わないよ、インターンシップできるよというふうに受け入れてくれました。  その後、大学3年生のときには、福祉学科に通っている人たちと会うことがあって、福祉学科は福祉の現場に直接携わることができるということを知りました。そこにも興味を持ち始めて、転科の試験を受けて転科しました。  その後ニュージーランドにも、福祉研修として研修に行ってきました。私は聞こえないので日本語を聞くのも大変なのですけれども、現地では英語が中心でした。最初はどういうふうに内容を理解しようかと考えたのですが、一緒に行ったある友人にノートテイクをしてくれる方がいて、友達にノートテイクをしてもらいました。その優しさのおかげで、ニュージーランドに行ってもいろいろな学びを得ることができました。  そして、大学4年生になり、私は社会福祉士の資格を取る予定です。そのために現場実習を約5週間、聴覚しょうがい者施設に実習に行って、相談支援の現場を学んできました。そこで地域の福祉のニーズを利用できないろう者がいることを知りました。やはり聴覚しょうがい者によって、例えば手話が必要であったり、聴覚しょうがい者とは何か、ということをまわりに理解してもらうことが大事だと学びを通して知りました。ほかにも、教員免許を取得する関係で、教育実習にも行ってきました。ろう学校を選び、社会科の授業を担当させてもらいました。そのときにはいろいろと教えてくれる指導員の先生や生徒とのかかわりを通して、とても充実した学びを得ることができました。大学4年の福祉と教育の分野、それぞれの実習を通して、私は将来、福祉の知識を持っている先生になりたいという夢を持っています。 ●写真 檀上の内山さんとパソコンテイク担当の学生の様子。講演者に向かって左手前にパソコンテイクの文字表示専用のスクリーンがある。専用スクリーンの手前に、3台のノートパソコンを並べた机が前後に2列あり、学生が座ってキーボードを打っている。 内山/ ほかにも学外の活動としては、聴覚しょうがい児の学習指導を行ったり、ろう学校に行って乳幼児のお世話をしたり、幼稚部とか、あとは先生などの支援をしているボランティアをしています。  このように、4年間でいろいろな経験をして、私自身成長することができました。これはやはり立教大学の支援室が充実しているからだと私は考えています。自分でできることと、自分のやりたいことというのを優先して勉強ができたわけです。そして、できないところはサポートしてもらえる環境がありました。 ■大学で受けているサポート 内山/ 続いて、今受けている情報保障について話をしたいと思います。まず、ほとんど私はパソコンテイクという方法をお願いしています。写真にもあるように、私の隣に聞こえる学生が座りパソコンを打ちます。その出た画面を私自身が見て、授業の内容、先生の話を理解し、自分がノートをとっていくという方法です。このパソコンテイクのおかげで、情報は格段に多く得られるようになったことを実感しています。高校までは全く何を言っているかわからなかったので情報量が少なかったのですが、大学入学後は、この支援のおかげで情報が圧倒的に多くわかるようになりました。授業の面白さというものを初めて実感したわけです。  ほかにも手話通訳のサポートも依頼しています。ディスカッションが多いゼミや演習については、手話通訳をお願いしています。写真にもありますとおり、グループディスカッションのときに、手話通訳者が、それぞれ発言している学生の通訳をして、その通訳に合わせてすぐ、リアルタイムで私自身も意見が言えるという良さがあります。普段、グループディスカッションと言えば、今まで黙っていることが多かったのですが、手話通訳者の支援があることで、自分自身の意見もリアルタイムに伝えることができます。  ほかにも、この支援方法はおそらくほかの大学にはない方法かもしれませんが、こういった体制もとったことがあります。昨年、しょうがい者福祉領域の実習指導という授業がありました。学生と先生も含めてメンバー8人で進める授業ですが、IPtalk(アイピートーク)というソフトを使って、8人モニターという機能で、聞こえる学生、先生も一緒になって文字で、チャット形式で授業を進めるという方法を取り入れてみました。これは、実習指導の先生の発案で提供されたやり方なのですが、やってみた結果、とてもよかったです。また、この方法をする場合は、聴者、ろう者ということは関係なく、みんな見て、文字でディスカッションができるという良さがあります。これは、聴覚しょうがい学生にとっては新しいサポートの形になったなというように思い、いい経験になりました。  最後に、ろう者といえば、映像と文字の両方を見るということで、映画なんかでも、普通に映像を見ただけでは聞こえないとわかりませんよね。字幕がないものは今この世の中に溢れています。そのときに、支援室に申請をすると音声を文字化してくれる支援というのがあり、その支援を受けています。これは世界史の授業なのですが、世界史の内容についての映像を文字化したもので、文字量を見ていただくとわかるように、とても速い音声になるのですけれども、それを見て映像の内容を理解しています。 ■4つの要素 内山/ まとめとして、「立教と私」ということで、私自身、4つの要素で成り立っているなというふうに思います。まず1つ目が、「情報保障」。これは支援室やテイカーたちのおかげで授業がリアルタイムによくわかる。そして、学ぶ楽しさというものを実感できるものになります。その実感のおかげで挑戦するという気持ちが芽生えることができます。友人、先生、職員のおかげで、やりたいことに何でも挑戦しようという気持ちが得られるという「挑戦」、2つ目の要素が出てきました。そしてその挑戦をたくさん、実習やインターンシップを通して、それが経験になったのだなというふうに思って、3つ目の要素は「経験」。そして、最後にその蓄積された経験をもとに、以前はなかった、社会に出る前に必要な力は何か。そして、自分がやりたいことは何かということを考えることができました。これが、4つ目の要素の「社会へ」です。 ●写真 スクリーンの前で講演する内山さん。スライドに表示されている図の中心に「立教と私」と書かれていて、それを囲むように時計の12時・3時・6時・9時の位置に4つの円があり、「社会へ」・「情報保障」・「挑戦」・「経験」と書かれている。 内山/ この4つの要素の積み重ねで、このおかげで、将来は先生になりたいという夢を持つことができました。やはりこの生活ができたのは、立教大学の支援室があって、まわりの友人、教職員のサポートもあり、全てのかかわりの中であったことが、その成果につながっていると思います。この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。  今年、私は卒業するのですけれども、来年から新しいしょうがい学生が入ってきた際にも、新しい支援室づくりというものが進んでいくのだなというように考えています。  以上で私の報告とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。<場内拍手> 佐伯/ 内山さん、ありがとうございました。そして、講演してくださった3名の学生の皆さんにもう一度拍手をお願いいたします。<場内拍手> ■質疑応答 佐伯/ では、次に質疑応答の時間に移りたいと思います。今回の質疑応答は、壇上に講演学生3名と、本日、司会を担当してくれている学生3名に並んでいただきます。壇上のセッティングを行っていますので、しばらくお待ちください。その間に質疑応答の際のお願いをお伝えします。発言される前に所属、学生の方は大学名、学部、学年、そしてお名前をお願いします。スムーズな情報保障のために、ゆっくりとはっきりと発言されるようお願いいたします。  また、手話で質問をされる方は、ステージのほうまで来ていただけると幸いです。それ以外の方は席までマイクをお持ちしますので、立ってご発言いただける方は席のところにお立ちください。ご協力をよろしくお願いします。  ここで改めて司会を担当している学生3名の紹介をさせていただきます。向かって左から、森さんです。聴覚しょうがいがあります。続いて、右に3人目、大島さんです。視覚しょうがいがあります。さらにその右隣、西村さんです。下肢のしょうがいがあります。適宜、質問の内容によって答えてもらいます。  それでは、質疑応答を始めますが、会場の中からご質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ●写真 机の前に横一列で6名のしょうがい学生(左から、森さん、内山さん、若杉さん、大島さん、西村さん、長田さん)が座っている。学生の左手に佐伯氏が座り、マイクを持ち学生に向かって話している。 一般参加者A/ ありがとうございました。就労移行支援事業所というしょうがいがある方が働くトレーニングをするところと、学習支援事業を運営している会社のAと申します。今日は3名とも、学校のサポートとしてよかったところを幾つも挙げていただいたと思います。実際に社会人になるというところで、こんな支援があったらいいのになとか、こういう支援がなくて実際困るのではないかなというところがあれば、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。 佐伯/ ありがとうございます。働くところでどのような支援があったらいいかということについて、学生のみんながどう考えているかについてコメントが欲しいということでよろしいでしょうか。  では、全員に聞いていますと時間が足りなくなりますので、できれば、高学年の学生、それからインターンシップを経験した学生を中心に、この質問をさせていただきたいと思います。では、今日インターンシップの話をしてくれた長田さんに、お答えをいただいてもよろしいですか。お願いします。 長田/ 実際、僕はインターンシップを経験して、働くというのは、もう大学生活が比でないぐらい、実はすごく大変だったという思いがあって、やっぱり介助とかも必要だし、あと、満員電車で揺られるだけでもすごく辛くて、そういう意味で、例えば、そういう時間帯をずらしていただいたり、あと、最近、インターンシップでも経験して、欧米でも結構主流になってきている在宅勤務というのがあって、やっぱりその人に合ったフレキシブルな対応がどんどんできて、そういうのが、例えば健常者でも怪我したり、妊婦さんだったり、というのにもつながりますし、そういう柔軟な対応がどんどん増えていったら、全員が過ごしやすい就業になるかなと思いました。 ●写真 一列に並んだ学生のアップ。マイクを持ち話す長田さんと、その背後に立ち手話通訳をしている学生。 佐伯/ ありがとうございます。では、もう1人、インターンシップに行った内山くんから、コメントをお願いします。 内山/ ろう者の場合は、やはり会議に参加するということですとか、そういったところで、情報の不便さというのがあります。できれば、会議のときには、今、目の前にパソコン通訳のモニターがあるのですけれども、そのように文字としての保障があると会議に参加できますし、情報についてはシビアになっていただいて、大事な情報の場合には、パソコンまで準備できなければ、メモをすぐ書いていただくような配慮というのは、やはり大切だなと思います。  また、ほかにも、まず、自分の状況というのを話す力は必要だと思うのですが、必要な支援を話した後に、それができるのかというのはまた別の問題なのですが、できるととてもうれしく思います。 佐伯/ ありがとうございました。よろしいでしょうか。  それでは、続いてご質問のある方、お願いいたします。では、前の方、すみません。隣の方お願いいたします。 一般参加者B/ 近所に住んでいるBといいます。若杉さんにお願いします。オリンピックから見ましたら、パラリンピックはいろいろな意味で下にみられているのですね。せっかくチャンピオンになられているのですから、ぜひ模擬試合でも結構ですから、このキャンパスの中でやってほしいなと思っています。よろしくお願いします。 佐伯/ ありがとうございます。なかなかパラリンピックは、オリンピックと比べると、どうしても認知度も低いかなというところですね。立教大学でも模擬試合をしてどんどん広めていけたらいいのではないかというご提案と受けとめました。若杉さんご自身から、今のコメントに対して何か受けとめられる言葉があれば、お願いできますか。 若杉/ 確かにおっしゃるように、まだまだパラリンピックの認知度というのは低いのですけれども、その中でも同等に扱おうという動きが実際に起きてきているので、私たち選手もそれにきちんと対応できるように、対応できるようにというか、同等に見られるように、競技力であったりとか、競技者としてふさわしいように成長していきたいなと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。 ●写真 一列に並んだ学生のアップ。若杉さんがマイクを持ち話し、登壇者の学生たちは微笑んでいる。 参加者B/ ぜひ実現するように、よろしくお願いします。 佐伯/ ありがとうございました。それでは、先ほど手を挙げていただいた後ろの方、よろしいでしょうか。お願いいたします。 一般参加者C/ 日本IBMのCです。今日の講演者の長田さんが参加してくれたインターンシップを担当していました。長田さん、どうもありがとうございました。  インターンシップでは、しょうがい者の方たちに6カ月参加していただいて、ITが、しょうがい者の方たちにもっと役立つことができないかというふうに検証していただいているプログラムです。なかなかちょっとITが、しょうがい者の方からすごく敬遠されていると感じていて、どうしたらもっと使ってもらえるかなと思っているのですけれども、そんな点で何かご意見をいただければなというふうに思っています。 ちなみに、来年もインターンシップをやります。3月から6カ月で、12月半ばか1月には、説明会とか募集を開始しますので、どうぞよろしくお願いします。 佐伯/ ありがとうございます。今の質問は、ITを活用していくというプロジェクトをされていらっしゃる中で、しょうがい者の方からちょっと敬遠されている可能性があるということで、もっとどう使っていってもらえるか、皆さんの中からご意見を募りたい。私個人的には、支援機器を非常によく活用している大島くんからこのコメント、どのように広げていけるかということをコメントいただくことはできますか。お願いします。 大島/ 僕の場合は、今、主に大学には3つの機器を持ってきています。1つが、iPhoneを持ってきています。もう1つが、スクリーンリーダーを搭載したノートパソコンを持ってきています。もう1つが、「ブレイルセンス」といって、機能はパソコンとほぼ同じなのですけれども、ディスプレイが画面ではなくて、点字が浮き出てくるディスプレイになっているものです。それら3つを使いながら、授業などを受けています。  大学に入学してすごく感じるのは、授業でもパワーポイントとかエクセルとかワードを積極的に使っていて、特に立教はITに力を入ている大学だと思うので、それについては活用をしています。また、友人関係を構築する上でも、LINEやFacebookはすごく役に立っているので、それらを使っています。  音声と点字だけなので、なかなかスピードとかは、やっぱりパッと見るときとかは違うと思うのですけれども、それでもほぼ普通に操作をする分には問題ないし、むしろ大学に入学してから、高校のときにしっかり勉強していたので、まわりの学生よりできてしまうときもあったりするので、本当に、べつに視覚しょうがい者だから情報機器が使えないとか、そういうことを感じることはなくて、むしろ積極的に活用することで、しょうがいというものをしょうがいではなくせるようになるのかなと思っているので、ぜひ活用したいと思っています。 ●写真 一列に並んだ学生のアップ。大島さんがマイクを持って話し、登壇者の学生たちは楽しそうに笑っている。 佐伯/ ありがとうございます。よろしいでしょうか。では、ほかの方、ご質問ある方、挙手をお願いできますか。 参加者D(他大学学生)/ 法政大学現代福祉学部2年のDと申します。私自身も弱視で視力にしょうがいがあるので、大学のしょうがい学生支援室でサポートを受けていて、講演していただいた3人の方の、学ぶこと、授業が理解できることの楽しさですとか、大学でそういった人間関係が広くなって、自分の世界が広がったですとか、そういったことにはとても共感を持つことができます。聞いていてとてもためになりました。ありがとうございます。  1つ質問させていただきたいのですが、大学での人間関係というのは、友人関係とか先輩や後輩との関係で、とてもすごく広くなったというは、私自身も実感していて、多分、皆さんもそのように思ってらっしゃると思います。支援室以外の方に自分のしょうがいについてお話をする機会もたくさん増えてくると思うのですけれども、そのときにまわりの人に自分のしょうがいとか、自分のサポートをしてほしいことを理解してもらえるように、何か気をつけていることがあれば教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。 佐伯/ ありがとうございます。今日の講演を聞いていただいて共感をいただけたことに、まず感謝申し上げます。ありがとうございます。  では、支援室のスタッフ以外に話す機会も増えて、自分のしょうがいのことを理解してもらうために、どんな工夫とか、心がけをしているかというようなことをお話いただきたいのですが、まだ答えていない方たちにお願いをしようと思います。森さんはいかがでしょうか。 森/ そうですね、聴覚しょうがい者をかわいそうだなというふうに思っている人が多いと思いますので、実際に聴覚しょうがいがあっていろいろ大変というのはあるのですが、自分のしょうがいの程度についてきちんと説明をして、やってほしいことを伝えて、それをやってくれれば、私はできるのだということが伝わるのが一番しょうがいの理解には大事だと思います。しょうがいの程度、そして理解してもらいたいことを1つずつ伝えて、何ができるか、そして何ができないか。自分が聞こえないからできないのか、それとも聞こえる、聞こえないに関係なく、努力すればできることなのかということをはっきり提示する。そして最後に気をつけることは、説明して、しょうがいの内容が自分だけのことであるということです。聴覚しょうがいとひとえに言っても、全く聞こえ方が違うと思うので、あくまでも私のことだという前提で話をします。聴覚しょうがいをひとくくりにしないようにという話、理解をしてもらうことが大事かなと私自身は思っています。 ●写真 手話で話す森さんのアップ。 佐伯/ ありがとうございました。今年入学して、新しい友達や仲間が増えていったであろう西村くんにも同じ質問をしたいのですが、ご自分のしょうがいのことを話すとき、どんな工夫とか、どんなことを心がけながら伝えているか、お答えいただいてもよろしいですか。 西村/ 自分が皆さんに自分のしょうがいを伝えるときには、まず初めに積極的に自分から話しかけて友達関係をつくっていきながら、その中で、自分が手伝っていただきたいことなどを話しながら、そういうふうに友人関係を築いています。 佐伯/ ありがとうございました。それでは、時間ももう間もなくですので、あとお一人ぐらい、もしよろしければご質問を受けたいと思いますが、いらっしゃいますでしょうか。お二人から挙がってしまったので、このお二人を最後にさせていただければと思います。 一般参加者E/ 私は娘が先天性の無痛無汗症というしょうがいを持っています。いつも親として娘の将来のためにどうサポートしていったらいいかということに悩むのですけれども、結局は親の意向を押し付けているのではないかという考えとの葛藤がいつも私の中にありまして。皆さんがここまで成長されてきた中で親御さんから受けてきたサポートで、例えば、これはとても助かったですとか、印象に残ったことなどがありましたら教えていただきたいのですけれども、よろしくお願いします。 ●写真 会場後方より見た客席。1名の参加者が立ち上がり質問している。 佐伯/ ありがとうございます。すてきなお母様からのご質問をいただきました。皆さんが成長してきた中で、親御さんから受けたサポートで印象に残っているもの。これはすごくよかったと感じているものがありましたら、お話をいただきたいと思います。もうひととおり皆さん、お話しいただいたので、われこそはという方に、手を挙げていただきたいのですが、いかがでしょうか。大島さん、手が挙がりましたので、お願いいたします。 大島/ 僕の場合は、小中高とずっと盲学校に通っていたのですけれども、小学校のときは地域の児童館にも通っていました。そのとき、児童館に入るにあたって、まだ視覚しょうがい者を受け入れる体制ができていなくて、その自治体からも「ちょっと」と言われたのですが、両親がそれにすごく何度も何度もお願いしてくれて入ることができて、盲学校だけでは経験できない、普通の小学校で遊べるようなこととか、いろいろな友達とかかわることができました。幼いころはやはり、なかなかしょうがいについても理解できていないですし、自分から積極的に行動するといっても、子どもの場合だと範囲も限られてしまうので、両親がそうやっていろいろな、自分が生きていく上で必要な道とか人脈をある程度用意してくれたことはとてもうれしく思っています。  それ以降、もう中学生、高校になってしまうと、逆に今度は、両親がいろいろとやるよりは、自分自身でやりたいので、僕の場合なのですけれども、僕が相談して、それに協力してもらうという形にしていて、両親から何かをするということはあまりしてもらっていません。  なかなか、しょうがいがあると僕も両親にどこまでお願いして、どこから自分でやればいいのか、悩むときもあるのですけれども、それはしょうがいの程度も合わせつつ、どんどん自分でできることを少しでも増やせるように、温かく両親に見守ってもらったことをとてもうれしく思っています。 佐伯/ ありがとうございました。すばらしいコメントをいただきました。  では、最後、もう一方、お願いいたします。 参加者F(本学兼任講師)/ 立教大学社会学部の兼任講師のFです。非常に充実した内容で、ありがとうございました。  ただ、全体の印象として、皆さんすごく真面目だなって思ってしまったのですね。べつにこれはよくも悪くもという意味なのですけれども、今日、全然不真面目さが垣間見えなかったのがちょっと物足りなさを感じています。 ●写真 会場の中で、1名の参加者が立ち上がり質問をしている。 参加者F(本学兼任講師)/ ちょっとだけ僕の話をすると、僕も弱視であまり見えていなくて、大学院は立教を出ているので、在学中は支援室の皆さんに大変お世話になったのですけれども、サポートをお願いしていると、授業をサボりにくいのですよね。例えばですけれども。すごくサポートが充実しているということはすばらしいのですけれども、でも、人並みに午前中の授業とか眠いからサボりたいのですよ。そういう不真面目さというのが、皆さん、あるのかないのかというか、こういう講演会だからみんな真面目に見えるのか、普段からそうなのかというのが、ちょっと気になったところですね。  ついでに、支援室の皆様に聞きたいのは、そういう不真面目な、学ぶ意欲のないしょうがい学生が来たときはどうしましょうというのも、ちょっとお伺いしたいなと思いました。すみません、最後にこんな質問でごめんなさい。 佐伯/ F先生、ありがとうございます。まずは学生からコメントを、最後なので一人ずついただきたいかな、なんて思っているのですけれども。今日は不真面目な話が出ていなかったのですが、実際にちょっと授業だるいな、とか、そういったときがあるかなと思います。ぜひ赤裸々に自分が感じているこの今の話のテーマについて一言ずつお話をいただけたらなと思います。  では、ちょっと真面目であろう長田さんから、こちら側に向かってお話をしていただいてもよろしいでしょうか。お願いします。 長田/ 非常に鋭い質問で答えづらいのですけれども、やっぱりサボりたいなと思うときもあるし、僕はサポートも少ない、移動サポートが少ないと言えば少なくて、結構、友達に頼んでいることが多いので、友達だったらべつに、LINEとかして、「今日はサボるよ」みたいな感じでサボることも結構あって。でも、支援室でサポートがあるときはやっぱり、1回連絡するという手間があって、そういうのももちろん連絡して休んだり、連絡するのが嫌だから、とりあえず受ける、みたいなことがあって、そういう点では、ほかの学生とあまり変わらないような気もします。 佐伯/ では、西村さん。そのままマイクを回していただいてよろしいですか。 西村/ 僕自身は、まだ大学に入ってから一度も休んだことはありません。日によって疲れているときなどあるのですけれども、僕自身は移動サポートなどを受けておりますので、迷惑がかかってしまいますし、自分としては一生懸命頑張ろうと思って毎日頑張っています。 ●写真 一列に並んだ学生のアップ。西村さんがマイクを持って話し、隣の長田さんが笑っている。 大島/ 僕の場合は先ほどほとんど移動サポートとかを受けていないとお話したと思うのですけれども、春学期は5回サボって、秋学期は先週ちょっと、これは言い訳なのですが、1日はサークルの活動と、1日はフィールドワークと、1日はレポートがたまり過ぎて、これで授業を受けたらほかの単位に響くなと思って、3回ほど休んでしまいました。  基本的には先生方にもいろいろと事前にレジュメを送っていただいたりしているので、なるべく休まないようにはしているのですけれども、やっぱりしょうがいがあるからちゃんとやらないと、と思ってしまうと、しょうがいを意識し過ぎてしまうなというのと、あと逆に、1つを頑張り過ぎてほかのが崩れてしまうのは、僕はちょっと嫌だなと思って、取捨選択ということで、しっかりそこはしつつ、楽しい大学生活を送れればなと思っています。 若杉/ 実は、起きたら授業が終わっていたことがあったりしたのですけれども、でも、大学に入ってから授業とか勉強が面白いなと、ほぼ初めて思えるようになったので、授業は結構楽しんで参加しています。  あと、これでも結構、好きなようにやっているつもりなのですけれども、まわりの人からか「もっと遊んだほうがいいよ」って言われることが多いので、私は遊びの仕方がちょっとわからないので、誰か教えてください。以上です。 内山/ 大島くんが言ったように、私も頑張りすぎてはだめだという考え方を持っていまして、1、2年のときは本当に頑張り過ぎてしまって体を壊してしまった部分もあったので、大学3年以降は、疲れたら休む、サボりたいときには休むというように、テイカーにも連絡は必ずするのですけれども、した上で休ませてもらうことは大切にしています。最低限の連絡は大事にしています。  もちろん聞こえる学生もやっぱり休むという権利なのかわかりませんけれども、権利はあると思いますので、それはしょうがい学生にも同じ分だけある権利だと思っています。今、授業をたくさん取り過ぎてしまって、もう全部、真面目に参加するのはもう身体的にも無理なので、休みを取らせてもらって、無理のない範囲でやって、たまにいろいろ休む、などということもあります。以上です。 ●写真 一列に並んだ学生のアップ。内山さんが手話で話している。長田さんの後方に手話通訳の学生が立っている。 森/ 実は大学2年のときには、サボることができなくて、私も「体調が悪いので休みます」とうそをついてしまったことがありました。次の日に大学に行くと、皆さんは「大丈夫?」というふうに、「体よくなったの」とみんな心配してくれたのです。みんな優しくて、ちょっとうそをついたことに後悔をしたことがあって、その後、「体調が悪いから」といううそをつくのはやめました。  でも、サボろうと思っても、結局はやっぱり単位が影響してくる部分ですので、どうしても、具合が悪くなったときでも、何かないとき以外は、授業に行くように私はしています。 佐伯/ ありがとうございました。支援室はどう考えるかというご質問もいただきましたので、最後に簡単に、私が代弁をしたいと思います。  今、学生が話をしてくれたように、サポートを受けるということは、サポートの開始時間、終了時間という待ち合わせとお約束の中で動いています。なので、どうしても休みたいときは、自ら連絡を入れないといけないという負荷がかかります。これは私としては、やっぱりほかの学生にはない負荷だなと感じているのが事実です。なので、休むときは、体調不良であれ、ただ単に遊びに行きたいときであれ、とにかく連絡をしてもらえたら、それはもちろんいくらでも休む権利があると思っています。ただ、やっぱりそれを言うのが面倒だから授業に出ようと思ってしまうというのがかわいそうなところです。そこはやっぱり支援室と学生の間の人間関係、それが言えるという関係を築いていくということがすごく大事だと思っています。これからもますます人と人とのつながりということを大切に、支援室は運営していきたいと思っています。  もし、さらに何かご質問、今、登壇いただいている学生や、我々支援室に相談、質問がありましたら、この後、会場を出た外で個別にご質問を受けることもできますので、そこでお話をさせていただけたらと思います。  以上で質疑応答を終了させていただきます。どうもありがとうございました。 森/ ご質問いただいた皆様、ありがとうございました。ほかにご質問がある方もいらっしゃるかと思いますが、時間の都合がありますので、これで終わりにしたいと思います。 では、最後に閉会の挨拶をしょうがい学生支援室課長の工藤さんにお願いしたいと思います。工藤さん、よろしくお願いします。 ■閉会の挨拶 ●写真 マイクを持ち閉会の挨拶をする工藤氏と、その奥に立ち手話通訳をしている学生。文字表示専用スクリーンにも挨拶の内容が表示されている。 工藤/ しょうがい学生支援室の工藤と申します。私は今年の6月からしょうがい学生支援室の課長となり、私自身も初めての講演会でしたが、皆様にとってはいかがだったでしょうか。支援室開設5周年の節目の年に、しょうがい学生自身による講演会が開催できたことは、とてもうれしいことでした。今日まで学生たちが主体となり、準備を重ねた結果、すばらしい講演会になったと確信しています。  講演会の冒頭に、佐伯からご紹介した本学のしょうがい学生支援の基本である、支援を受ける側とする側という一方通行のサポートではなく、お互いが学び合う、双方向の活動とする。しょうがいの有無にかかわらず支援にかかわる全ての学生が、さまざまな学生や教職員との出会いを通じて共に学び、社会で共に生きていける人材へと成長できるよう支援するということが、今日登壇した学生たちの話から実感していただけたと思います。  本日の講演会をきっかけとして、これらの基本姿勢を多くの人が実践できるようになれば、こんなにうれしいことはありません。しょうがいが一人一人の個性として受けとめられて、特別なことではない、そんな社会になるように、まず立教大学から発信できるよう、我々、しょうがい学生支援室スタッフも頑張っていきたいと思います。今後も皆様からのご理解、ご指導を頂戴できれば幸いです。  最後になりますが、本日、自分自身のしょうがいに真正面から向かい合い、私たちに貴重な話を聞かせてくれた学生たち、そして、この講演会を開催するために、さまざまな役割で頑張ってくれたサポートスタッフの学生たちに大きな拍手をお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。 森/ 工藤さん、ありがとうございました。今回の講演は、大学でしょうがい学生がどのように過ごしているかを知るいい機会になったと思います。最後に、講演をしてくださった若杉遥さん、長田直也さん、内山涼さんに拍手をお願いいたします。  最後に2つ連絡がございます。1つ目は、アンケートに関するお知らせです。講演会が始まる前にお配りした資料の中にアンケート用紙が入っていると思いますので、記入をお願いいたします。講演を聞いて感じたこと、気になったこと、意見など何でもいいので、書いていただければと思います。アンケートを書き終わりましたら、会場を出たところにアンケート用紙回収箱がございますので、そちらに入れてください。アンケート用紙がない方は、いらっしゃいませんか。もしいらっしゃいましたら、学生スタッフに声をかけてください。大丈夫でしょうか。  では、次に2つ目のお知らせです。しょうがい学生とお話したいと思う方もいらっしゃるかと思います。15時50分までお時間をいただけるとのことですので、講演が終わった後、ロビーでお話していただければと思います。  これをもちまして講演会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。お気を付けてお帰りください。 ●写真 会場後方より見た、会場の全景。満員の客席。 ■当日の様子 最終ミーティングで流れを確認 ●写真 会場前方に内山さんが立って話しているのを、学生スタッフ・職員が座って聞いている。 DVD映像のナレーション打合わせ ●写真 ナレーションを担当した2名の学生のアップ。 案内 ●写真 会場内で、電動車いすを利用している参加者のサポートをしている学生。上着を脱ぐのを手伝っている。 笑顔で誘導 ●写真 誘導担当の3名の学生が横一列に並んでいる。真ん中の学生が、会場の方向を矢印で示した案内板を持っている。 受付にて。点訳資料も学生で作成! ●写真 テーブルを挟み、受付担当の学生と参加者が向かい合っている。白杖を持った参加者が点字のパンフレットを渡され、触って確認している。 当日の参加者はなんと150名 ●写真 会場後方より見た、会場の全景。壇上には6名のしょうがい学生が一列に座っている。 交流会にも学生による手話通訳をつけました ●写真 マイクを持ち話している学生と、その隣で手話通訳をしている学生。後方のスクリーンには、左手前で2名の学生がパソコンテイクをしている内容が表示されている。 パソコンテイク ●写真 パソコンテイク担当の6名の学生。1つの机に3名ずつ並んで座り、その机が前後に2つある。各学生の前に1台ずつノートパソコンが置いてある。真剣な表情。 歓談ではたくさんの人から質問が! ●写真 会場外のロビーで2名の学生が立っており、2名を囲むようにして5~6名の参加者が向かい合っている。 講演者と歓談の様子 ●写真 左側に参加者が1名、右側に若杉さんが立ち、向かい合い笑顔で話している。 講演に聞き入る参加者 ●写真 西田氏と工藤氏が座り、講演者を見つめている。周囲には参加者。 集合写真 ●写真 50名ほどの学生スタッフ・職員が集まっている。 以上