魔法少女ミラクル★オラクル

文学科文芸・思想専修 F・Y さん

 私はストーリーの中核に「自己犠牲」の問題を据えて、小説を書き上げました。自己犠牲は、多くのフィクションで美しく崇高に描かれています。世界を救うため、未来を守るため、誰の目にも正しい目的が「犠牲」を正当化します。ですが、その正しさを受け容れられないのもまた人間ではないか――そんな思いから、自己犠牲に関する個人的な葛藤を物語に託しました。
 これまでも趣味の範囲で小説を書いてきましたが、テーマを念頭に長編規格の文章を書くのは初めての経験でした。卒論を通して、自身の創作の幅を広げられたのはよかったと思います。
 難しさもありました。これまで私は三人称でしか小説を書いたことがなく、当初は同様に書き出したのですが、筆が進まず、冒頭部を書いては消しての繰り返しで数ヶ月を費やしてしまったのです。コンセプトと文体に不整合があったのが原因でこれまで築いてきた文体を一旦捨て、全編を一人称で書き直すことで解決しました。
 これから小説を書く人には、どんなに馬鹿馬鹿しい前提でも、徹底的に考え抜けばリアリティを宿す、というメッセージを贈りたいです。突飛なアイデアを嘲笑することなく真摯に向き合って欲しいと思います。虚構を虚構として描くのではなく、ひとつの現実として組み上げるとき、そこに文学が生まれます。