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教員に聞く!文学部で学べること  文学科ドイツ文学専修 坂本 貴志 教授

時代に流されないクラシックな価値が人間に魅力を与える

 学生には「自分の好きなことを勉強しなさい」と話します。おもしろい題材を自分で見つけてきなさいと。でも自分の関心を見つけるのは実はとても難しいことなんです。大学に入学するまでに好きなことが見つかっているのだとするとそれはその人の大切な個性ですし、逆に言うと、それを見つけるのが大学、特に文学部の役割なのだと考えています。

 私が伝えられるのは、ドイツ語を通してさまざまな物事、考え方に触れるおもしろさ。学問では「自分を客観化してみる」ことが重要ですが、その手法の一つに、外国語、外国文化を知るというのがあります。英語圏に比べると、ドイツは、現代では変化球的な位置づけかもしれません。しかしそのドイツを比較対象として置いてみると、日本文化や日本語圏に生きている自分をまた違う角度から見ることができます。世界を見るときの眼差しは一つじゃない。その選択肢のひとつにドイツもあるよ、ということです。

 私のゼミでは卒論テーマを決める際、ドイツ語圏に関わることであったら何でもいいと言っています。ですから文学はもちろん、美術や音楽、建築、それに哲学者のハイデガーを研究する学生もいます。私としては自分がおもしろいと感じるものが見つかればそれでいい。見つけるためにどんどん手を出して欲しいんです。ドイツの建築であるなら、重要な書物を地道に読んでみるとか、ハイデガーなら原文を読んでみるとか。とにかく「それで何が分かるか、やってごらん」と話します。ゼミでは"教える"というよりも、ドイツ語を通して、彼らが世界を見るのをサポートするという感覚です。

 学年によって少し異なりますが、基本的にゼミでは2年生で日本語の文献でいいから関心を持ったことをまとめて紹介。徐々に関心の対象をしぼっていき、しぼることができた3年生以上は、ドイツ語文献をもとに考察していくというスタイルで進めます。特に大事にしているのが発表と質疑応答の時間。その場にいる全員がかならず発表者に質問をするようにしています。質問をすることで思いがけない視点で、発表者の関心が問い直されることが多々あります。一人の発表につき2時間ほどかかることもありますが、この発表者と質問者、両方が互いを育て合うという過程を何よりも重視しています。

 文学部、とりわけドイツ文学ともなると「何の役に立つのですか」なんて辛辣な意見が出ることもあります。でもすぐに役立つものは、すぐに廃れるものでもあるため、流行の中でしか意味が無いと私は思うのです。これほど変化の激しい時代において役に立つことばかりを求めていたら、あっという間に自分の技術は陳腐化します。だからこそ古い時代の、長く人間に愛されてきたものを掘り起こして、魅力を見つけることが、真の意味で人間の力になるはずです。役割や有効という言葉に敏感になり過ぎた今、時代に流されないクラシックな価値を見出すことができる貴重な場所、それが文学部とドイツ文学専修なのではないでしょうか。

(取材日:2016年12月)

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