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教員に聞く!文学部で学べること  史学科世界史学専修 小澤 実 准教授

文学部で、じっくり理解を深める忍耐力を養う

 私は瀬戸内海に浮かぶ島で、少なからぬ人が船の免許を取得する環境で育ちました。ですから小さい頃から海や船への関心が高く、船が歴史のなかでどんな意味を持っているのかを調べていくうちに、北欧のヴァイキングというテーマに辿り着き、現在も研究を続けています。何がきっかけで研究テーマに出会うかは分からないものです。文学かもしれない、映画かもしれない、私のように環境かもしれない。ただどんな興味も学問への入口になり得ます。たとえ入学時には決まっていなくても、好奇心のアンテナさえ立てておけば、2年、3年と学びを進めるなかでかならず見つかると思っています。

 文学部の基本はテクストをきちんと読むことだと私は考えています。時間をかけて試行錯誤を繰り返しながら、書いた人が何を伝えようとしたのかを正確にとらえる訓練を重ねるのが文学部。最初はつらいです。難しい言葉だと、1日かけても数行も進まないことも。でもこの一言一句を無駄にしない忍耐力、そして理解しようとする意志を培う場所が、文学部だと思います。

 忍耐力を養うことは、そう簡単ではありません。授業に出られる時間は限られていますので、きちんと予習をし、教員と対話して、ある種の回答を出し、それを復習するという、時間のかかるステップを何度も繰り返す必要があります。でもこのステップを省略して、手軽な参考書みたいなものに頼ってしまうと、文学部で学ぶ意味が無い。露出の多い著名研究者などの、誰かの考え方、物の見方に乗っかってしまうのは容易いことですが、それはあくまで他の人の見方です。その情報の元となるテクストに立ち返り、そのテクストをつうじて世界の歴史を読み解く目を培うのが、文学部で歴史を学ぶ醍醐味です。

 こうした文学部ならではの訓練を私は"足腰を鍛える"と呼んでいます。これは企業の採用担当者に聞いた話なのですが、文学部を卒業した学生というのは、入社してすぐの即戦力にはならないそうです。しかしこれが5年、10年経つと、じっくりと深めた理解が花を咲かせるのか、徐々に実力を発揮できるようになるそうです。私のゼミでは比較的教員を目指す人が多いのですが、文学部で鍛えた足腰の強さは、どんな業界に進んだとしてもかならず身を助けてくれるでしょう。

 文学部に進んだ以上は、卒業論文の執筆にはぜひ取り組んで欲しいと思います。情熱を傾けることのできるテーマを自分で選び、それについて時間をかけて調査し、まだ誰も言っていなかったような何かを発見する、それができれば卒業論文としてはもう万々歳です。ひとつのテーマに対し、1年以上もの時間をかけて取り組むわけですから、途中で思い通りにいかないこともあるでしょう、でもたとえ寄り道をしたとしても、完成まで辿り着くのが文学部のアイデンティティ。ぜひともチャレンジしてほしいです。

(取材日:2016年12月)

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