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教員に聞く!文学部で学べること  キリスト教学科 加藤 磨珠枝 教授

キリスト教という窓を通して、知性の自由を見つけよう

 「キリスト教学科で何を学べるんだろう?」と心配そうに入学してくる学生が、毎年、数名います。でも、ご心配なく。立教大学は、建学の精神に聖公会のキリスト教教育を掲げるミッションスクールで、本学科はその伝統を受け継いでいます。私たちの文学部は、英語で"College of Arts"と表記されますが、Collegeとは、元来、西洋中世の修道院から派生した学びの場で、教員と学生が共に祈り、生活する空間でした。現代では、教員と学生が一緒に暮らすようなことはありませんが、キリスト教を学問の対象として学びながら、学生一人一人の関心にあったきめ細かい教育を大切にしています。もちろん、学生に信仰の有無などを問うことは一切ありません。

 具体的な学びの内容はとても幅広く、キリスト教の歴史や思想、芸術文化、聖書学はもちろん「キリスト教と映画」など、多彩な授業が開講されています。たとえば、私の専門はキリスト教美術ですが、今年度は「フィールドワーク」で東京にある歴史的な教会建築を取り上げて、学生と一緒に事前学習と見学を行いました。

築地、聖路加国際病院付属
「聖ルカ礼拝堂」1936年献堂

 この写真の教会を見て、どこだと思いますか?まるで、中世ヨーロッパのゴシック聖堂のように見えますが、実は1936年に東京・築地の聖路加国際病院に付属して建てられた「聖ルカ礼拝堂」です。もともと外国人居留地であった築地には、池袋に移転する前の立教大学もありました。なぜなら、この地区に住んでいた当時の外国人宣教師たちは、キリスト教の布教だけでなく、学校運営などの教育事業や、病院・貧者救済の社会福祉事業にも力を注いでいたからです。ですから、立教大学と聖路加国際病院は、いわば一つの志から誕生した兄弟分だったわけです。

 1923年の関東大震災で古い病院が倒壊したため、再建された新病院の一部が、写真の礼拝堂です。設計には、アントニン・レーモンドやJ. V. W.バーガミニーというチェコ出身の建築家たちが関わっており、同じ時期に建設されたアメリカのボストン、マサチューセッツ総合病院の建築から影響を受けたとも言われています。

 さて、このフィールドワーク授業から学生たちは何を学んだのでしょう。ある学生は、教会堂建築に興味をもって、西洋中世のゴシック建築様式が、なぜ20世紀の日本でリヴァイヴァルしたのかについて調べました。別の学生は、幕末から昭和にいたる日本のキリスト教の歴史に築地地区が果たした役割について考えました。その他にも、キリスト教と病院運営など、社会福祉の問題に興味を示す学生もいました。このように、一つの授業にもたくさんの学びのチャンスが開かれています。

 日本において、キリスト教人口は少数ですが、その社会的、文化的影響は様々な分野に及んでいます。文学、音楽、美術の領域はもちろん、宗教間の対立が多くの戦争の原因になっている昨今の状況にあっては、平和問題を考える上でも、キリスト教とイスラーム、ユダヤ教との関連を歴史的に学ぶことは、きわめて重要です。宗教本来の姿は、人間をあらゆる偏見や社会的束縛から解き放ち、真理を追究する自由な精神へと導くこと。

 卒業後の進路は他の学科とほぼ変わりありませんが、このキリスト教学科で豊かな社会人としての教養と、まっすぐな心を育んでいただきたいと思います。

(取材日:2016年1月14日)

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