トップ » 受験生へのメッセージ / 史学科:世界史学専修 弘末 雅士 教授

既成の枠組みにとらわれず、東西交流の歴史を学ぶ

 大学の史学科はたいてい、日本史、東洋史、西洋史という枠組みで出来上っていて、大学によってそこに地理が入っているところもあります。立教の史学科の特長は、東洋史、西洋史という分け方をせずに、日本史学、世界史学、そして地理の代わりに超域文化学という専修を設けていることです。歴史の研究は特に近代以降、たとえばアジアを立脚点にしても、同時に欧米やその他の地域との関係も考えなければなりません。我々の学科では東洋・西洋の枠組みを固定化せずに、諸地域との交流や比較を通して事象を考えていこうという目標を持っています。

 世界史学専修は、大陸世界と海域世界という枠組みを前面に出し、積極的に東西交流を考えることをうたい文句にしています。日本史学専修も、いわゆる日本だけを見るのではなく、東アジアの中の日本、世界の中での日本という視点を大事にしています。超域文化学専修は、より現代的なテーマに即し、文化というものを広域的に、また文化が複合する観点も含めて考えてみる領域です。歴史的な展開とともに、現代的な問題に力点を置いたコースということが言えます。

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専修を決めるのは2年生から

 史学科では、1年次に入門演習という授業があり、必ず日本史学専修、世界史学専修、超域文化学専修それぞれの専門の先生の講義を受けます。そして、1年間いろいろと検討してもらい、2年生以降のゼミを選んでもらうやり方を採っています。

 学生の関心は変ります。例えば東南アジア関係の記述は、高校の世界史の教科書のなかで確か全体量の2〜5 %ぐらいしかありません。新入生は、「あそこはごちゃごちゃ王朝があって、ややこしかった」くらいしか印象を持っていないわけです。ですが、入門演習でいろいろの領域の専門の先生の話を聞くうちに、2年生になると東南アジア史が専門の私のゼミに進もうと考える人も出てき、また高校時代にはあまり縁のなかった超域文化学に関心を持つ人が出てくる。やはり、入門演習を経るなかで、関心も変っていきます。

 また、歴史学というのは、高校時代の日本史や世界史の勉強と違い、諸事実の暗記を主眼とする学問ではありません。史資料をとおして、なぜこういう出来事が起ったのか、なぜそれが書かれたのかということを考えてみる。それが歴史学の主要な目的だということを理解してもらうのも、入門演習の役割です。

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物事に気長に取り組むと、変化に出会える

 私は東南アジアの海域世界の歴史を専門としていて、ゼミではアジアの海域世界のことを担当しています。東南アジアの港町は、古くから現在に至るまで東西世界のいろんな人々がやってきたところです。世界史的に見ても、おそらく東部地中海世界と並んで、東南アジアはもっとも東西交流の歴史の蓄積があるところではないかと思います。

 東南アジア史を志したきっかけは、ベトナム戦争です。私たちの世代は、中学、高校、大学時代に、連日ベトナム戦争が新聞で報じられていました。否が応でもベトナムや東南アジアに関心が向きました。大国の帝国主義的な介入に対して、東南アジアの人たちがどのように抵抗したのか、植民地支配を脱し、どういうふうに自分たちの国家づくりをしていったのかとかいうところに、当初は関心がありました。

 ところが、歳月を経てくると、パラダイム転換が起こります。以前は光を放っていたナショナリズムや国民国家というものに、今日人々は行き詰まりを感じてきています。そういうなかで最近は、例えばベトナムならベトナム、インドネシアならインドネシア、そういう国家や文化社会の枠組みが、どのようにして出来上ってきたのだろうか、気になるようになりました。東南アジアの個性や特質を重視することから、それらが周辺世界との関係のなかでいかに形成されてきたかを検討する方向へと、私自身の研究もシフトしてきました。

 受験生の皆さんにとっては、年配者の戯言のように聞こえるかもしれませんが、研究を20年30年やっていると、こうしたパラダイム転換が必ずあります。そうしたなかで、「自分は以前あのことを中心に考えていたが、今ではこういうことが大事になるんだ」と気づかされる。歴史家が、自分を取り巻く世の中の価値観が変わるなかで、歴史の事象をとらえ直す新たな観点を授けてもらうことを意味します。歴史研究者にとっての醍醐味ではないかと思います。

 人間の営みには、長い積み重ねがあって、現在に至っています。多様な問題を抱える現代や不透明な未来に不安を感じている人には、ぜひこれまでの人間の営みに目を向けていただきたい。歴史学に関心を持ってほしいと思います。

 歴史学はかなり面倒くさい学問です。ですから、おそらく歴史学をやった人間は、社会に出てからの取り組みにおいても、一番気長に物事に対処できる人材ではないかと思います。即決したい、ついつい答えを求めたいという気持ちはわかるのですが、そうでない領域もあり、そうした事柄への取り組みを持続していくことは、大事なことです。学生たちを送り出す我々としては、それをアピールしたいと思っています。

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