「天地の主である父よ、あなたをほめたたえます。これらのことを知恵ある者や賢い者には隠して、幼子のような者にお示しになりました。」
マタイによる福音書11章25節
本当とウソを見分けることは実に難しい。過ぎ去った過去のことはもちろん、今のことについても、何が本当で何が嘘なのかを簡単明瞭に見極めることは決してたやすくない。さらに、真実を装った事柄が巧妙に作られた場合は、嘘が本当に成りすましてしまう。
詩人谷川俊太郎は1964年に次のような詩を詠った。
うそはほんとうによく似てる/ほんとうはうそによく似てる/うそとほんとうは/双生児
うそはほんとうとよくまざる/ほんとうはうそとよくまざる/うそとほんとうは/化合物
うその中にうそを探すな/ほんとうの中にうそを探せ
ほんとうの中にほんとうを探すな/うその中にほんとうを探せ
(『谷川俊太郎詩集』ハルキ文庫、63-64頁)
最近日本社会を騒がしている様々な偽装事件を見ると、心を痛めている人が多い。偽装マンション、食品の賞味期限や産地の偽装、やがては教師の資格を偽りで取ろうとするところまで至った。こういった中、60年代半ばの安保闘争時代の混沌とした時代に書かれた詩人のメッセージは、まるで今の日本社会に対する預言のように聞こえてくる。一体何が本当なのか。
イエスは、心の貧しさや世間の価値から注目されない人々の立場から世界を見つめ直すとき、そこから新しいものが見えてくると言われた。世間的な知恵や賢さはなくても、むしろ子供のような純粋なまなざしを持つとき、即ち幼子のような者にこそ、神の国のメッセージが見据えられるのだ。大人の世界で通用する常識や利害関係、体面などに縛られない自由、そして確実な自己利益という結果に縛られない本来の意味の知恵を求めたい。澄んだ目で、この世界と社会を見つめていきたい。
2008年07月28日




